門戸をひらいて安い外国製品を輸入して貿易の黒字幅を縮める代りに、日本は貿易黒字を拡大し続けたために、世界一生活費の高い国になった。と同時に諸外国に対して一方的に自国通貨が高い国になってしまった。その過程で、さきにも述べたように稼いだドルをアメリカに持って行って国債を買ったり、株式投資をしたり、不動産に投資したりしたから、二百四十円の時にドルに換えた人も、百八十円の時にドルに換えた人も、ドルが百円とか八十円になると、ドルで持っている財産が半分以下の値打ちしかないようになってしまった。粒々辛苦して稼いだお金は日本円になおすと半分以下に目減りしてしまい、とんだ大損に見舞われてしまったのである。
またドルを準備金として日本銀行がお札をドンドン印刷したので、日本国内がお札の洪水になり、空前の株高と不動産高が惹き起された。やがてその反動が来て、株価や地価が何分の一にも下がってしまうと、高値で借金をして株や土地を買った企業は返済ができなくなり、日本国中の銀行が融資を焦げつかせて不良債権のために身動きができなくなってしまったのである。
こうなったのも、もとはといえば、ドルを稼ぎすぎたからであり、もう一つにはドルを準備金として日本円を発行する制度を何の疑問も持たずに受け入れてきたからである。つまり予想もしなかったような大量のドルが日本人の手に移ったために、逆にドルにふりまわされて日本中が大怪我をしてしまったのである。このことはカネはたくさんあるほどよいとは必ずしも言えず、非常にしばしば禍いのもとになることを示している。
たとえば一ドル二百四十円だった時に稼いだ円をドルに換えて、アメリカで利息を稼ぎ、円が百二十円に値上がりした時に日本へ持って帰るとすれば、二年間に年一〇%ずつ利益をあげたとしても一・二一ドルは百四十五円二十銭にすぎないから、儲けるどころか、逆に四〇%も大損をした勘定になる。
なるほど円をもとに勘定すれば大損したことになるが、円で持っている資産や現金をドルに換算すると短期間に倍にふえたことになる。どちらが正しいやり方かということになると、日本から円をドルに換えてアメリカに持って行った人にとっては大損だが、同じ時点でドルを日本円に換えて日本で株式投資をやった人は、株の値上がりと円高によって財産を大きくふくらませたことになる。
反対にドルが百円を割って八十円になったところで、円をドルに換えてアメリカで運用をはじめた人々は百二十円とか百四十円と円安になっていく過程でお金が儲かったことになる。反対に百四十円とか百四十五円でドルに換えてアメリカのファンドを買った人がアメリカの株の大暴落にあって、株安とドル安のダブルパンチであわててファンドを売って再び日本円に戻ってきたら、恐らく半分残ればよい方であろう。
こうしたことが起るのも、日本人がアメリカの国内通貨であるドルを稼ぎすぎて、しかもそれをお金として何の疑いもなく受け容れてきたからである。現実にドルは国際通貨として世界中で通用しているので決済手段としてドルを受け取らないわけにはいかないが、ドル建ての資産を持てば、ドル・レートの動き次第で大儲けもできる半面、大損もさせられる。アメリカとしてはドルを劣勢に導くことによってドルで資産を持っている日本や中国や香港や台湾を大損させることができるので他の国が持たない大きな権力を振っているようなものである。少なくとも輸入品を借金して仕入れて先に使ってしまい、あとで借金を目減りさせて、荷を軽くすることができる。
こうした魔術が可能な限り、恐らく今後も同じような為替操作が基軸通貨国の常套手段となり、対米債権国はくりかえし債権の目減りによって損をさせられることであろう。アメリカが意識的にそれをやっているかどうかは別としても、そうしなければアメリカが莫大な債務の重荷から逃げられる術がないこともまた事実である。
←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ