私自身、いくつになっても失敗ばかりくりかえしているので、とても他人様に教訓を垂れたり、知恵をさずけたりする資格はないと思う。そういうと、「嘘ばっかり」、とおっしゃられるかもしれないが、本当にいくつになっても失敗ばかりしているのである。どうしてかというと、一つのことが成功すると、同じ路線上で仕事を拡大して行く興味を失い、また別の新しい試みに挑戦したくなるからである。
たとえば、私は十五年くらい前に、日本ではじめてビジネスホテルというものをつくった。
私以前に、似たようなアイデアのホテルを開業した人はいたが、仕事のために東京に出張してきた人々が出張旅費の範囲内で泊ることのできる安くて機能的なホテルを建て、それに「ビジネスホテル」という名前をつけたのは私が最初であった。もし私が正真正銘の実業家だったら、多分、私は新しい大穴を発見したのだから、この途一筋に打ち込んで、ビジネスホテルの全国チェーンづくりに精を出したことであろう。そうしていたら、今頃は日本最大のビジネスホテル・チェーンのオーナーになっていて、「ヒルトンとどっちか」というぐらいにはなっていたのではないかと思う。しかし、私はビジネスホテルの経営に成功すると、ゼミの講師になって、「ビジネスホテルはこうして経営すればよい」という講義こそしたが、自分でホテルを拡張しようという気にはならなかったので、経営者として大をなすことができなかった。
次に私の心をとらえたのは、海外に工業団地をつくって国内企業を海外に移転させることであったから、もう一度振り出しに戻って処女体験をすることになってしまったのである。
こうした私の態度は、私が事業家としての素質をもっていない証拠であり、そのために今日なお大事業家になっていない原因でもあるが、何が人生の目的であり、何に喜びを感ずるかという価値観が違うのだから、もったいない、どうにかならないですかといわれてもどうにもならないことなのである。
そのかわり、成功や失敗の場数を踏んでいるという点では、人の何倍も人生を生きているという実感がある。もし私が事業の失敗や不運について語る資格が多少なりとあるとすれば、それは私の生きざまから生じてきたものといえるだろう。
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