たとえば、交通事業やエネルギー源としての電力やガスは、原則として現金払いである。阪急の創設者小林一三翁は、電車の商売からスタートしたが、電車賃はもちろん現金払いである。一日が終わると切符売場に現金がドッと集まり、その金を銀行員が持ってかえる。儲かっているか損をしているかは、毎月、集計をして決算すれば、賃借対照表にはっきり出てくる。
こういう商売になれてくると、手形で支払われたり、ツケであとから集金に行く商売がまどろっこしくなるから、以後の小林商法はデパート、宝塚、東宝、阪急不動産、ホテル、東京電力など、どれ一つをとっても現金商売でないものはない。
デパートの食堂で食事をするのは、現金どころか前金制度だから、食べてしまってからあとで金がないと居直られる心配もないのである。また、まさか映画を見に入るのに、お金はあとで取りに来いということはないし、家や土地を売る商売だって原則は現金払いで、住宅ローンに切り換えた場合でも会社は、銀行から一時金で支払ってもらうから、取りっぱぐれはまずない。
こういう商法に徹すると、現金が毎日、銀行の口座に入ってくるので、銀行の側から見ても金の流れがハッキリしているし、その金をあてにして、資金を融通してやってもよい気になる。
電車とかバスを経営している会社は現金商売であることと、不動産業を兼業しているせいで、銀行が密着して離れず、巨額の融資をしてもらえる。
戦後の三十数年間はたまたま経済の成長とインフレの進行で、不動産がたいへんな値上がりをしたから、電鉄会社はいずれも莫大な含み資産を擁するようになり、また多角経営に乗り出して、それぞれの名を冠した一大コンツェルンを形成するに至った。地方に行ってもこのことは変わらない。
地方電鉄は、東京や大阪の電鉄会杜に比べればスケールは小さいが、同じようにデパートも経営しておればスーパーも経営している。また結婚式場やホテル事業にまで進出している。あまり上手な経営といえないものも多いが、現金商売と不動産業で一貫していることは同じなのである。
それこそ堅実経営を地で行ったようなもので、現金で支払ってもらえることと、信用の裏づけになる不動産をもっているから、銀行からも取引先からも、絶対的な信用を得ているのである。
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