12. 失敗から学ぶことも多い
あわてず時間の経過を待つ
失敗を恐れてはいけない。失敗を恐れると勇気が挫けて、何をやっても自信がなくなってしまう。しかし、現実に失敗をすることはもちろん決してほめられたことではない。
さきにも述べたように、経済界でいっぺん失敗をすると、再起できるまでに少なくとも二年くらいの歳月が必要になる。それは、債権者に追いまくられたり、裁判所に出頭させられたりして時間をとられるからだけではない。自信喪失した頭が正常な状態にもどるまでに、かなりの歳月を要するからである。
人間は感情の動物だから、ショッキングな事態に直面すると、ほかの人のことなら絶対にそういう反応はしないであろうようなバカな反応の仕方をする。失恋などはその一番典型的な例だが、悲しみのあまり自殺をしたり、無理心中までしでかしたりする。そういう思い詰めたやり方をしないまでも、もうこれで自分の人生はおしまいだ、と思い込んでしまったりする。
しかし、その場面をきりぬけて時間がたってみると、どんな強烈な出来事でも水に洗われて岩が形を変えるように、少しずつ形が変わり、記憶が薄れて忘却の彼方に流されて行く。倒産に直面したときの人間も同じで、「いっそ死んでしまいたい」と過激なことを考える。でなければ、頽勢を挽回するために突拍子もない起死回生策をおっぱじめる。実はそのどちらも、平常心を失っているときだから、しばらくたつと、どうしてあのときあんなことを考えたんだろうと首をかしげたくなるていのことが多いのである。
人生を生きていると、いわゆるバイオリズムがあることに気づく。運勢とでもいうか、運が上昇線を辿っている間はさしたる努力をしていなくとも、仕事は順調にすすみ、良いことが重なって、もしかしたら自分は相当の人物ではないかと妙な自信がついたりする。
ところがいったん下降線を辿りはじめると、逆風に向かって船を進めているような気分になり、やることなすこと思い通りにならず、まとまる商談まで潰れてしまったりして、「禍は単独でなく必ず複数でやってくる」という諺どおりのことが起きる。そういうときは、いくらあがいてもどうにもならないのだから、いっそジッとこらえて時間の経過を待つにこしたことはない。しかしそういうときに限って、人はあわてるあまり前後の判断もつかなくなってしまうのである。
あるとき、中古車の売買を業としている人が、万策つきて私のところへ駆け込んできたことがあった。私の相談室では、「相談にはのるが斡旋はしない」と明記してあるのに、手紙を読むと、「先生にご融資をお願いできませんでしょうか」と書いてある。困って助言を頼みにきた人にいちいちお金を貸していたのでは、いくらお金があってもたりないが、そもそも見も知らない初対面の人にお金を貸してくれると思うほうがどうかしている。
私はこの人、相当いかれているなと思いながら面会に応じたが、きいてみると不渡りこそまだ出していないが、親戚から借金したり、親戚に保証人になってもらって銀行からお金を借りている。また保証協会に保証してもらって国民金融公庫からも借りられるだけ借り出している。
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