中止したおかげで、資本金の食い潰しは半分ですんだが、もしその意見通り進行していたら、おそらく出資金の全部を食い潰した上に、借金まで残ったことであろう。技術者であるということと企業家であることは別の才能であって、中小企業の社長の場合は、この二つを兼任していることが多いので、つい二つの意見がごっちゃまぜにされてしまう。技術者として述べてもらいたい意見の中に、企業主としての意見が混入する。しかもそれが企業主としては失格の人の意見であるから、うっかりすると失敗の二の舞をくり返すことになりかねないのである。
ここで私がいいたいことは、経営者として失敗した人の持っている知識や体験の中には専門家としてのそれと、経営者としてのそれが混入しており、倒産した直後は、この二つのうちで使えるものは一つしかないということである。
前章の中古車の社長の話で、私は仕事を整理したら、同業者の友人のところにしばらく身を寄せたらどうですか、と提案したが、これはその社長の「社長としての手腕」はもう一つパッとしないが、中古車の仕人れやセールスについては一応の専門家だから、その部分の手腕は同業者にとっても役に立つのではないかと思ったからである。
永年、親しくつきあってきた友達のことでもあり、この際、手をさしのべてやろうという気になれば、助けてもらう側の倒産社長としては、これくらいしか役に立ててもらえるものは持っていないのである。また助ける側としても、捨て金を払うつもりであれば、たいして役立ってもらわなくてもさしつかえないようなものであるが、相手に肩身の狭い思いをさせないために、その長所を生かしてもらうのも一案である。
ただし、倒産社長に経営者としてアドバイスしてもらうことはないのだから、助けるほうも助けられるほうも、その一線をきちんと守る必要がある。さもないと、せっかくの好意がかえって仇となって、喧嘩別れになることもあり得ないことではない。
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