新しい商売を選ぶコツ
そういう目で見ていると、時代とともに衰微する業種と、次に新しくおこってくるであろう業種を区別する基準のようなものがいやでも目についてくる。もし次に新しい商売を選ぶコツがあるとすれば、それはこうした基準に照らしあわせてどうかということではあるまいか。
まず第一は何が不足しているか、ということである。世の中が不景気になったというのも、物が売れなくなったからであるが、物が売れなくなった原因はというと、物が豊富になってありあまるようになったからである。お金がなくて買ってもらえないのではなくて物があまって購買欲が減退してしまったのである。したがって需要を上まわって供給の可能な業種は万年不況の様相を呈するようになる。繊維や造船が二十年来、斜陽産業と目されてきたのはこうした情況によるものである。反対に、不足がなかなか解消しないままでいる分野もある。たとえば、不況のために家が売れないで余っているというけれども、どこの家の住宅事情も満足な状態にあるわけではない。家が狭いためにこれ以上物を収納できず、そのために家具なども不況産業入りをしてしまっているし、家庭電化製品にもこの傾向は生じている。だから「せめてもう一部屋」という願望にこたえる政策がとられたら、住宅関連は今後もなお有力産業といえるであろう。
第二に、産業界や家庭生活の上で、ネックになっている部分を解決する役目をはたしているかどうかである。冷たい弁当は当たり前とされてきたが、御飯は熱いほうが冷たいよりうまいにきまっている。「ほっかほっか弁当」はそうした欠点を解決することに成功した。
日本人は団体で旅行することが多く、温泉宿に泊まる何十名、何百名の食事をいっぺんに出してくる。その食事を整えるためのコックは不足気味で、どこの温泉宿も配膳には頭を悩ましている。私の友人で、この泣き所に着目してクロウト向きの料理を半製品に加工して、あとは油で揚げるか蒸すかだけで立派な料理になる加工食品をつくって売り込みに行った人があった。どこの温泉組合もこのことでは頭を痛めていたから、実物を見せて実演すると、一カ所で月に三〇〇万円くらいの商談ができるそうである。「板前いらず」とでもいうか、アルバイトのおばちゃんだけで宴会料理ができれば、大助かりである。そういう種類の工夫は好不況に関係なくいつの時代でも世間から受け入れられる。
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