物の不足も解消し、人手不足も解消して不足するものがなくなってしまえば、産業界はいやでも不況におちいってしまう。既成の生産秩序も行き詰まってしまう。世界的な同時不況の原凶は、基本的には先進国家が成熟社会に突入したことと関係があるといってよいであろう。
では、成熟杜会にまったく新しい需要がなくなってしまったのだろうか。充たされたといっても、先進国にもまだ貧富の差が残っているし、先進国と発展途上国の間にはもっと大きな較差が厳然と存在している。また全体として豊かな生活になったとはいえ、コンピュータ産業や遺伝子工学のように、人間の頭脳や身体の延長線上にある未開発の分野が残されている。
こういう社会で何が不足しているか、考えてみると、何といっても「知恵の不足」ではないだろうか。現に、コンピュータも人間の知恵の延長だし、糖尿病をなおす薬だとか、癌の特効薬だとか、動物の雌雄、人間の男女別を生みわけるテクニックも、知恵で勝負する分野だといってよいだろう。
ロボットの普及によって生産過程から整理淘汰された人々が流通業界やサービス業界に流れ込む。しかし他業種からの流入が多いといっても、既成の企業と同じものが倍にふえるということではない。新規参入者は必ず新しいアイデアをひっさげて登場しなければ、既成の業界に割り込むことができない。
別の角度からみれば、割り込むスキマを見つけるだけの「知恵」があるかどうかが問題であり、知恵のあるなしが商売のキメ手になる。知恵さえあれば、商売のタネが尽きることはないのである。
そういう知恵を持った人の介入が起きると、陳腐化した企業は敗退するから、流通、サービスの業界でも、メーカー業と同じように、新しい選手交替が起こる。「知恵」を商品化することが、次のヒット商品になるのである。
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