知恵のあるなしがキメ手
前章で、新しい商売を成り立たせる条件の一つとして、「何が不足しているか、を考えろ」と書いた。何が不足するか、だけを例にとっても時代によって激しい移り変わりがある。終戦後は、物が不足したから物をつくり供給する商売はどんな商売でも繁盛した。こういう時代にはヤミ商人でも、米や芋をつくる農家でも、古着屋でも商売になった。メーカーはとりわけ優位に立ち、東洋紡とか日清紡とか、のちには東レや帝人のような化繊会社が、ある時期大儲けをした。
やがて食料や衣料が充たされるようになると、次は住居の不足が目立つようになり、また最低生活がひとわたり充たされるようになると、次は一段と高級な日用品や家財道具が売れるようになった。テレビ、冷蔵庫、クーラー、自動車など、いずれもある程度、購買力が伴うようにならなければ、需要の喚起されないものであるが、豊かになれば豊かになった分だけ新しい需要が起こり、かつてゼイタク品と考えられたものでも、次から次へと大衆に浸透して、「物に対する欲望には際限がないのではないか」と思われるほどであった。
これらの需要を充たすために、続々と工場が建ち、スーパーやチェーン・ストアができ、
「四つの島に九〇〇〇万人の過剰人口」といわれた国が一億二〇〇〇万人の人口にふくれあがっても、人手が不足するようになった。
不足した分野はいつの時代も新しい投資の対象であるから、人手不足になると、今度は人手不足を解決する商売が成り立つようになった。自動包装機、自動販売機、無人化駅、ワンマンカーなど、いずれも省力産業の一環である。人手不足による賃金の急騰は、やがてコストダウンのための企業の多国籍化を促し、ついにはロボット産業の今日の発展を見るにいたった。ロボットの採用、工場の無人化は、製品のコストダウンにはつながって行くし、また人手不足の解消にも役立つから、人手不足はもはや産業界のテーマではなくなってきた。
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