第32回
納税者が税法の権威者に早変わり

年の暮れになると、
日本経済新聞の婦人部の部長さんがやってきて、
「久しぶりに夕刊で何か連載をしてくれませんか」
と依頼がありました。
「何か興味のあるテーマがありますか」
ときくから
「税金のことはどうですか」
と提案したら、向うはとびあがるほど驚いて
「いくら邱センセイでも、
 あんな砂をかむような面白くないテーマで
 読者の関心をつなぎとめることは困難でしょう」
という意味のことを言いました。

私は不景気でさんざ苦しんだあとだから、
税金についての関心は相当高いですよ、
いま本屋に並んでいる税金の本はいずれも
税法の解説書で、国税局のお役人あがりの人か、
税理士の先生方が書いていますが、
税金を払う側の人の立場にたって書かれた本は
1冊もありません。
私は2年くらい前から税金の本を買ってきて
シロウトなりに少しずつ勉強していますが、
納税者としてどうしたら税金が安くてすむか、
無い知恵を搾っています。
私に納税者の立場から見た
税金の本を書かせてくれませんか、
と婦人部長を口説いて、
「ゼイキン報告」という連載をさせてもらいました。

文士の書く税金の本も異色なら、
納税者の立場に立った税金の本も前代未聞でしたから、
連載中、各方面の話題になり、
完結して1冊の本として出版されると、
たちまちベスト・セラーズの仲間入りをしました。
出版を担当した同社の出版部長さんが
ベストセラーズになった報告に見えて
「どうしてベストセラーになったか知っていますか」
ときくので、
「どうしてですか」
とききかえしたら、
「世の中にはあわて者がいて、
 キンゼイ報告と見間違えて買うからですよ」
という答えがかえってきました。

セックスの話にしてはきいたことのない名前だけど、
もしかしたら大ベストセラーズ「性生活の知恵」を書いた
謝国権先生の親戚と思われたのかも知れません。
それにしても大へんよく売れたので、
私はたちまち税会の権威ということになって
税金デイに国税庁長官のお相手を
何回もつとめさせられました。
大した知識でもないのに、
見る角度が違っただけで、
たちまちその道の権威者になってしまうのです。





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