第118回
書道はアジアを代表する文化です

人間の知恵は昔も今もあまり変わらないので、
昔の知恵が役に立つことがあります。
古典をひもとけば、
そういう知恵が無尽蔵に詰まっています。
でも昔の知恵が通用しなくなったことも
たくさんあります。

いまの中国の若い人は、
アメリカン・ライフには最大の関心を持ち、
マクドナルドやケンタッキー・フライドチキンには
いつも人だかりがしていますが、
中国の書画などふりむきもしません。

私は中国でも
事業の真似事みたいなことをやっているので、
そのために時間を割きますが
それ以外に余裕の時間をなるべく持つようにしています。
新聞雑誌の連載ものをいまも8本抱えているので、
原稿にも追われていますが、
何もやらない時間を持つと、心にゆとりができます。
そういう時は中国人の生活や物の考え方に立ち入って、
何千年も続いてきた中国の文化って何だろうと
考えさせられます。

文化には色んな側面がありますが、
言葉が一番手っ取り早い物差しなんですね。
たとえば、中国語をきけば
中国人が何を考えているかわかりますが、
なかでも漢字に特長があります。
毛沢東になってから略字が採用されるようになり、
漢字の伝統が無視されてしまいましたが、
書家たちはいまでも昔風の字を書いています。
私はそうした字の芸術を
中国人の智恵と文化として尊重し、
鑑賞している一人です。

西洋には言葉の文化はありますが、
字の文化はありません。
たとえば、パリに行くと、
バルザックやスタンダールの
ナマの原稿が売られていますが、
それは書いた人が有名な作家だからであって、
字のうまい下手は問題になりません。
ところが、書にはその内容のほかに、
それを書いた人の腕前がどうかという
美的な評価があります。
漢字が輸入されてその国の言葉として
定着した日本にも、書道というものがあります。

たとえみんなが捨てて顧みなくなったものでも、
良い物は良い物です。
中国を歩きまわってみて
私が一番親しみを覚えるのは「書」です。
同好の人はいないものでしょうが。


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