第138回 
お金で人の心を引きとめられなくなった

サラリーマンになることを俗に宮仕えと言います。
宮仕えとはご殿に行って働くことで、
命令された通りに働けばよいのです。
しかし、実際にやって見ると、
言われた通りにできて当り前で、
うまく行かなければ爆弾をおとされます。
また必ず話のわからない上司や同僚がいるもので、
意地悪をされた上に、
責任をなすりつけられたりします。

昔のサムライは世襲制でしたから、
どんな不愉快な目にあわされても、
忍の一字で耐えるよりほかありませんでした。
サラリーマンが世襲制でなくなってからは、
辞めることができるようになりましたが、
辞めればランクのおちた仕事しかありませんでしたから、
やっぱりガマンをして
一生を一つの会社で通すのが当り前でした。

いまは違います。
就職した会社で気に入らないことがあれば、
会社を辞めて別の会社に移ることができます。
仕事を変えることもできれば、
もっと給料の多い会社に移ることも可能です。
折角、猛烈な競争を勝ち抜いて一流企業に就職したのに、
半年もしないうちに会社を辞めて、
あてどのない外国旅行に出かけてしまう人もあります。
そもそも大学を出たら就職をしなければならないとは
誰がきめたことでしょうか。

そうした常識に逆らって生きる若者たちが
日増しにふえています。
これも世の中が変わったからです。
何も定職につかなくったって生きる方法は
いくらでもあります。
フリーターをやってもメシくらいは食えるし、
既成の価値観や権威に従う積りさえなければ、
お金持ちになる必要もないのです。
これは工業生産が目指した
物質的に豊かな生活とはまた違ったものです。
多くの人々が
そういう考え方に同調するようになったのは、
もちろん物質的に豊かになったことが大前提ですが、
豊かになると豊かであることに
魅力がなくなってしまうのですね。
第2の転換期が来たというのは
そういう曲り角に
いま私たちが立っているということです。    


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