第194回
人はなぜファーストに乗るのか

辻静雄さんはその頃、
大阪に辻調理師学校というのを持っていて、
2500人くらいの学生を抱えておりました。
主にフランス料理を教えていたので、
1年にご夫婦で何回もフランスに行っていましたが、
往復いつもご夫婦ともファーストに乗り、
パリやリヨンに滞在中も
ホテル、レストランいずれも超一流でした。

職業とは言え、辻さんはあんまり食べすぎて
人間フォアグラみたいになり、
私より若いのに
私より早くこの世を去ってしまいましたが、
辻さんがリヨンの郊外に城の跡を買って
フランス分校をつくってから、
ことしで20年になるそうです。
その記念式典をポール・ポユースのレストランでやり、
フランス中の名シェフが集まったと、
辻2代目校長のご令息が文芸春秋に書いていましたが、
辻静雄ほどフランスの料理業界で顔の広い人は
2人とおりません。
辻さんがテレックスを打ってくれたおかげで、
行く先々、レストランのオーナーやオーナーシェフに
鄭重に扱われた記憶があります。

それにしても往復百何十万円もとられる
ファーストの航空運賃は20何年前は(いまも同じですが)
高いの一言に尽きます。
会社のお金で旅行する大会社の社長さんは別ですが、
私たちのように旅費を自弁する人間にとっては
もったいなくてなかなか払う気になりません。
どうして辻さんだけが
そんなに気前がよいのか不思議でしたが、
間もなくその秘密がわかりました。
学校の経営は学校法人か、
個人経営のどちらかしか許されず、
辻さんの学校は個人経営だったのです。

赤字経営なら別ですが、
辻さんのように立派な業績をあげていると、
個人所得の税率は最高93%という時代でした。
節約してエコノミーに乗ったところで、
利益が上がったら
ほとんど税金で召し上げられてしまいます。
それならば税金にとられるお金で
ファーストに乗った方がいいにきまっています。
ファーストのお客さんも大半が健康保険と同じ要領で
ファーストに乗っていることがわかりました。


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