第232回
オールド・エコノミーに生きる道あり

企画本部や本社と生産工場が
別々のところにあっても、
さして支障がないようになったのは、
電話とファックスとインターネットが
発達したおかげです。

私の知っている人で、
ヨーロッパの有名なデザイナーのデザインしたネクタイを
日本で製造している人がいます。
ネクタイはゼイタク品ですから、
素材によって価格がきめられるものではありませんが、
時代の風潮には勝てず将来に備えて
ネクタイの生地の生産から縫製まで
大陸でやる決心をしました。

中国のネクタイ生地の生産地は
老酒で有名な紹興と、
徐州作戦で日本人の記憶に残っている徐州にあります。
デザインはその土地の人の好みによって違うので、
日本人にはピンと来ないパターンのものが
織られていますが、
機械は最先端のものが使われていますから、
パターンの指定さえすれば、
希望のものがちゃんとできてきます。

そこでデザインはイタリアの有名デザイナーに頼むか、
日本の新進気鋭に頼んで、デザインしたものを
インターネットか、ファックスで送ると、
あとは電話で細かいことを注意するだけで、
指示通りのものができてくるそうです。
本社も日本にあって、デザイン・センターも日本にあって、
工場だけはコストの安いところにおくことに
少しの支障もなくなったのです。

ですから、オールド・エコノミーが衰退して
IT関連のニュー・ビジネスだけが
突出していると言うことはございません。
新しい文明の利器をうまく採り入れれば
オールド・ビジネスに
大きなメリットをもたらされるのですから、
IT関連にだけ目を向けるのは明らかに間違いです。
そういった意味でも一ぺん所得水準の上がった国が
空洞化によって後退する心配はないし、
むしろ生産基地と商圏の拡大によって
新しい活動舞台ができつつあると言ってよいでしょう。
そういう動きに目や耳を閉ざして
古来のやり方を墨守している人たちだけが
淘汰される運命にあるのです。


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