第445回
工業的豊作貧乏は農業とどう違うか

豊作貧乏とは、
食料品ができすぎて値下がりすることから起る
トラブルのことでした。
海に異変が起って、イワシがとれすぎたり、
イカがとれすぎでも同じようなことが起ります。
しかし、それは天候などの気象条件がもたらしたもの
ですから、一年かニ年で終わってしまうのが
普通でした。
あとは平年作になったり、
悪くすると干魃や洪水に見舞われましたから、
再び欠乏と不作に逆戻りです。
そういう時に戦乱でも起ると、
弱り目に祟り目ですから、物価はハネあがり、
お金の払えない人は貧乏のどん底であえいだのです。
豊作貧乏も凶作貧乏もいずれも農業社会の出来事ですから、
人類にとって珍しいことではありません。
ところが、今回の日本におけるバブルの崩壊は
工業生産がもたらした豊作貧乏ですから
人類の誰もがはじめて経験することです。
それがアメリカやヨーロッパの先進国でなく、
そのあとを追って先進国の仲間入りをした
日本で勃発したのは決して偶然ではありません。
工業生産では日本は後発国ですが、
先進国に学んでその技術や経営を身につけ、
やがて先進諸国を追い越して世界中の外貨を稼ぐ
最も豊かな工業国になったのです。

工業は農業と違って生産工程を天候に左右されません。
土地の大小にも縛られません。
また資源の産地でなければならないということも
ありません。
資本と労働力は不可欠ですが、
それはどこからでも移動できるものです。
戦後の日本人がメシを食べるためにはじめた仕事ですが、
欠乏と不足の中でスタートしたので、
人々が充足感を味わうようになるまで、
物はつくれば売れる状態が続いたのです。
食糧品なら胃袋の大きさに制約されますが、
工業製品は家の大きさとか、
空間の広さが容れ物ですから、
いくらふえてもまだまだ大丈夫であるかに見えました。
それが遂に飽和点に達したために
工業社会の豊作貧乏に辿りついたらしいというのが
私の見方です。


〜Qん新刊本〜



出版社:中経出版
定価:1400円+税
ISBN:4-8061-1476-6


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2001年5月29日(火)

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