第568回
東京も上海も他所者の町です

誰でも愛郷心を持っていない人はおりません。
「ふるさとは遠くにいて思うもの」と言われますが、
故郷を離れて他所の土地で働いている人の方が
その土地で暮らしている人より愛郷心があるかも知れません。

私は台湾の台南市に生まれ、
13才の時に台北高校尋常科の受験に合格して
台北市に出てから今日まで
自分の故郷で暮らしたことはありません。
のちに故郷に工業団地もつくりましたし、
また蒐集した民芸品を寄付して永漢民芸館もつくりました。
自分の仕事場は東京、台北、香港、上海、成都、北京、ロス
と各地に及んでいますが、
生まれ故郷に帰って住むことは恐らく今後もないでしょう。

私が調べたところでは自分の生まれ故郷で成功できた人は
ほとんどありません。
人間は子供の時から見なれた
「知りすぎた」町で成功できないものです。
知らない土地に行って他所者の目で見ると、
その土地の欠点や隙間がよく見えて、
どんな仕事をやればうまく行くかわかりますが、
「知りすぎた」町では固定観念に頭の中を占領されて、
新しい知恵が浮びあがって来ないからです。

東京も大阪も
地方から出て来た他所者によってつくられた町です。
戦後つくられた新興工業都市もすべて他所者の町です。
どこの県でも県庁所在地のような都市に
一極集中した形で人口が集まっていますが、
その多くは県内外の他所者です。
そうやって集まった人の中から新しい事業に成功した人が
その時代の成功者なのです。

もとを言えば、成功者は
他の土地で食い詰めた人の中から出てくるものです。
だからもし日本で食い詰めたとすれば、
それは他所の土地に行って
成功するチャンスに恵まれているということです。
むろん、出稼人の全部が成功できるわけではありません。
しかし、お金の儲かるチャンスの多いところに動けば、
成功するチャンスが多いことも事実です。
それが東京であっても上海であっても同じことです。


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2001年9月29日(土)

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