第635回
土俵が広がれば相撲の取り方も変わる

輸出入がきびしく制限されると、
どこの国でも密輸出入が盛んになります。
戦争直後の日本でも
一頃、砂糖や薬品や腕時計などの密輸入が
横行したことがあります。
インドネシアではずっと外貨の不足に悩んだので、
不用不急品には高率の関税をかけました。
ボウリングの機械に
600%もの税金をかけたことがあります。
それでもジャカルタにボウリング場があったのですから、
輸入制限は「悪の温床」になったものです。

貿易自由化の主張は当然のことながら、
経済の先進国からはじまりました。
一頃のアメリカは関税をいくら安くしても、
輸入より輸出の注文があとを断ちませんでした。
貿易は一方的な黒字ですから、
経済大国にとって、
弱体な発展途上国の輸入制限や高率な関税率は
大きな障害です。
当然のことながら、
輸出入の自由化と関税率の引き下げ要求は
先進国の利益と一致します。
WTOのそもそものスタートも
世界を豊かにしようという意図よりは、
先進国からの売り込みを
有利に展開しようという動機が見え見えでした。

しかし、貿易の自由化は
発展途上国の弱体な産業に打撃をあたえるので、
どこの国でも無条件では応じられません。
それを瞞し瞞し、曲りなりにも
世界貿易のルールとして通用させることに成功したのは、
貿易を自由化した方が保護貿易に徹するよりも、
どの国にとっても有利であることが
次第に理解されるようになったからです。

現に中国と台湾も加盟したし、
次はロシアが参加を希望しているのを見ても、
貿易上の障害とり除くことは時の流れであることが
はっきりしています。
その代わり世界同時不況の可能性も出てきましたが、
労賃の安い低所得国で物をつくって先進国に売ることも
可能になりました。
自由貿易の実現によって機会の均等がもたらされましたが、
だからといって世界の隅々まで先進国並みに豊かになると
保証されたわけではありません。
能力主義になって、
チャンピオンが交替する可能性が出てきたということです。


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2001年12月5日(水)

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