第637回
カネはカネの儲かる所に動きます

WTO加盟によってもたらされたもう1つの変化は
為替の自由化です。
貿易が自由化されれば、
モノの出入りをはばむ障害がとれるということですが、
モノが自由に動けば
その反対給付としてのカネも自由に動かなければ
何の役にも立ちません。

たとえば、中国は開放政策以降、
モノの出入りはかなり自由になりましたが、
カネの出入りは
相変わらずきびしい管制下におかれています。
一般の人が銀行に行って
人民元を政府の決めたレートで
自由に外貨に換えることすらできません。
そのおかげで、外国のお金が勝手に中国に出入りして
証券市場の相場を大きく動かしたり、
金融市場を荒らしたりする心配はありませんでした。
3年前のアジア金融不安の時も、
人民元が何の影響も受けなかったのは、
人民元が政府の完全な統制下におかれていたからです。

しかし、WTOに参加すると、
そういつまでも
人民元を兌換性のない通貨のままにしておくわけには
行かなくなります。
既に中国の保有する外貨は2千億ドルをこえました。
このまま貿易黒字がふえ続け、
外国からの投資もふえるとなると、
日本円がかつてそうだったように
切上げを諸外国から迫られたり、
過剰流通性によって国内通貨の洪水になる心配もあります。

恐らくそこに至るまでに、
為替の自由化と場合によっては、
固定相場制から変動相場制への移行も視界に入ってきます。
そうなると、世界中を動きまわって、
いい獲物はないかと目を光らせている
ニューヨークやチューリッヒの大鬼小鬼たちも
自由に出入りするようになりますから、
中国もアメリカや日本と同じように
カネでカネを儲けようとする投機資金の暴力から
身を守ることに苦労するようになるでしょう。

あと残されているのはヒトの移動の自由化ですが
ヒトが自由に移動できるまでには
まだまだ時間がかかります。
ヒトが自由に動けないままモノとカネが動くようになると、
各国の産業地図の方が先に塗り変えられます。
カネが一足先に動いて生産基地が変わってしまうからです。


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2001年12月7日(金)

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