第751回
銀行が成長産業を育てたと言うのは嘘

日本の経済が全体として成長を続けていた間、
日本の国は万年、資本不足でした。
創業する人と事業の拡張をする企業が
後を絶たなかったからです。

どちらも資本調達のために銀行に駆け込んだので、
銀行のトップの人たちは
自分らのお金を貸すわけでもないのに
とても大きな顔をしていました。
私の知っている或る大企業の相談役は昔を述懐して
「僕の社長時代は正月早々は
 毎年、銀行廻わりに明け暮れていましたよ」
と言っていましたが、
番付けに載るような経営者でさえ
銀行参りをしていたのですから、
創業したばかりの駆け出しや中小企業の経営者が
どうだったかは言うに及ばないでしょう。

新入りや弱体な企業に対しては銀行の方が
頼まれる側ですから、
支店長や融資課長は接待される時、床柱を背景に坐わり、
下にもおかぬもてなしを受けました。
私はそれを見て、いまに坐る位置が逆転する時が来る、
そうなったらいい気味だと言ったことがあります。
それはずっとのちになって
銀行にお金がだぶつくようになり、
銀行がお金を貸す相手を
探すようになってからのことですが、
万年資金不足の続いていた間は、
創業者の仕事の中で本業の次に大切なことは
お金のやりくりでしたから、銀行から融資を受けるために
多くの神経と時間が使われました。

日本でたくさんの成長企業が育ったのは
銀行がそうした企業に力を入れ、
気前よく資金を提供したからだと
銀行の功績をたたえる人がおりますが、
真相はちゃんと利息を払えるだけの利益をあげる企業にだけ
ドンドン資金を提供した結果にすぎません。
利息も捻出できない斜陽産業や中小企業に
お金を貸し渋ったので、
お金の儲からない業界や企業は後退し、
社会的需要のふえる業界と企業に
しぜんに入れ替わってしまったのです。
銀行に先見の明があったというのは買いかぶりであって、
銀行に先を見る目がないことは
いまの不良債権を抱えて四苦八苦している姿が
示している通りです。


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2002年3月31日(日)

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