第962回
ビジネスホテルは私が名づけ親です

いまから三十何年前に、
私は東京にビジネスマンのためのホテルを建てて、
これにビジネスホテルという名前をつけました。
これが日本におけるビジネスホテルのはじまりです。

どうしてビジネスホテルを建てる気を起したかというと、
当時、賃上げが年中行事化していましたが、
一番上がらなかったのがサラリーマンの出張旅費でした。
ホテルが少かった上に一番安い部屋の宿泊代が5000円で
サービス代と税金を加えると6000円かかりました。
一般サラリーマンの出張費は1日3000円でしたから、
「東京に出張に命ず」と言われると、
最初に頭に浮ぶのが仕事に対する責任感で、
その次が「足が出る」ということでした。

そこで私は3000円で泊まれるホテルが
できないものかと考えました。
サラリーマンが東京に来て泊るホテルは
交通の便利なところにあって電車を下りて
歩いて行けるところに位置していなければなりません。
夜の11時か12時まで東京本社や東京支店とつきあって
終電車前の飲料街で知らない人と
タクシーの奪い合いをすることなどとてもできません。
ホテルが横町にあってもかまいませんが、
電車を下りてから辿りつくまでに
雨にびっしょりぬれるのでは困ります。

部屋は狭くても個室で、バストイレがついていて、
プライバシイが保てる必要があります。
自動車にたとえれば、小さくてもちゃんと屋根もついておれば、
車輪も4つあるスバル360とでも言ったところでしょうか。
それでいて税込み3000円で泊まれるようにするためには
無駄なスペースも一切なく、人件費も最小限で、
要するに不必要なサービスは
一切ない造りにしなければなりません。

渋谷につくったそのホテルが完成して
事業をはじめた時、斯界の大先輩に当る
第一ホテルの人に見てもらったら、
「割合によくできています。僕たちにつくらせたら、
あと2坪くらい節約できたかも知れません」
と褒められたことがあります。
安い木貸宿はありましたが、
まだビジネスホテルがなかった頃のことでした。


←前回記事へ

2002年10月28日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ