第969回
安売りしてもお客はつかめません

ヨーロッパを歩いて見て、観光客は相変らずだけれど、
買物客は昔ほどではないなと思いました。
景気が悪いのは世界的傾向だけれども、
ヨーロッパはその先輩格です。
先進国としての歴史が長いだけに、
衣食住の各分野でかなり充実した生活を送ってきました。
欲しい物はあっても、それがなければ生活は
不自由を感ずるほどではないのでしょう。

ずいぶん前にニースに行った時、住宅事情について
土地の人にきいたことがあります。
どっちを向いても新しい家を建てている様子が
見えなかったからです。
すると、「フランスの若い人は新しく所帯を持っても
賃貸アパートに住んで親が死ぬのを静かに待っています。
毎月ローンに追われるより、そのお金で生活を楽しみます。
親が死ねばどうせ家はあくのですから」
という答えが返ってきました。

いまは日本もだんだんそんな感じになってきましたね。
住む家でなく、物の買い方も、もしかしたら、
ヨーロッパは日本の先輩格かも知れません。
以前に比べてマクドナルドの店がふえたり、
カルフールに代表されるような
日用品の安売り屋さんは目につきますが、
値引きでお客を集めるような焦った商売をやっている店は
ほとんど見かけません。
商売が下手なんだというよりは、
そんな商法に出ても買ってくれる人がふえないからだと思います。

当然、商売は沈滞します。
しかし、要らない物を買ってくれと言っても
仕方がないのですから、お客の必要な物だけを売り、
あとはどんな新しい物を
お客が欲しがっているのかを研究して
うまくあたった人だけが次の時代の成功者になって
古い商売と入れ替わるのです。
ファッション業者の静かな選手交替を見て、
これがデフレの下でグローバル化が進んでいる時代の
生き残り術かも知れないなあと
昔は感じなかったことを感じながら、
昔とあまり変わらないミラノやジュネーブや
パリの町を歩きました。

30年前も20年前も、年寄りの多い都市だと思いましたが、
いまは自分が年寄りになって同じ町を歩いているのです。


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2002年11月4日(月)

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