第980回
アメリカを手本にしてもうまく行きません

いまの日本の金融当局は
アメリカのやり方をモデルにして
不良債権の整理をしようとしていますが、
日本が遭遇しているピンチは
アメリカがかつて遭遇したことのないピンチです。
物ができすぎて工業的豊作貧乏に出食わしたのは、
日本がトップ・バッターで、
アメリカはむしろそのあとについて、
これから経験するところでしょう。

というのも、アメリカ国内で物をつくるよりも、
外国から輸入する方が安いことがわかると、
アメリカの多くのメーカーは生産することをやめて、
流通業者に変身したので、
デフレ下におけるメーカーの苦しみを味わっていません。
IT関連の成長が10年にわたって続いたおかげで
デフレと無縁でしたが、IT関連が頭打ちになると、
IT関連からデフレがはじまりました。
それが株価に影響して資産デフレが本格化すると、
デフレが消費の減退を巻き起しますから、
遅蒔きながら日本で起った同じことが
アメリカでも起ってきつつあります。

海外からアメリカに集まっていた資産は
目減りを恐れてアメリカから逃げ出そうとするし、
銀行から企業に貸し出されているお金も
株に投じられている資金も回収が困難になりますから、
日本の銀行で起ったことがアメリカの銀行に起ります。
いまはアメリカの銀行が日本の銀行の不良債権を買ったり、
倒産しかかった銀行を買収しようと
鵜の目、鷹の目になっていますが、
本体が持たなくなったら、
誰がアメリカの銀行を買ってくれるのでしょうか。

もう既にアメリカの金利も下げるところまで下げてきました。
もうあと、利下げの余地はいくらも残っていません。
それでもアメリカの経済が更に落ち込むようなら、
アメリカの銀行も不良債権漬けになるでしょう。
日本がアメリカに見習うのではなくて、
日本がアメリカのために先例をひらいているのです。
従って金融当局がいまやっているような不良債権の整理で
日本の銀行が立ち直ることは
あまり期待できないでしょうね。


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2002年11月15日(金)

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