第998回
日本製品の評判はサービス精神の結晶です

私が戦後、香港から東京に舞い戻って
小説書きに励んだ昭和30年代のはじめ頃は、
日本は家電ブームのはじまったばかりの時でした。
電気屋の店先にはトランジスター・ラジオをはじめ、
冷蔵庫や掃除機やテレビが並んでいましたが、
値段が高くて庶民にとってはまだまだ高嶺の花でした。

電気屋の店頭もお客で賑わっていましたが、
それにも負けず忙しかったのが
各電気メーカーのサービス・ステーションでした。
電気製品を買ってくれるお客がふえるのはいいけれど、
どこのメーカーの製品も
すぐに壊われて苦情が絶えなかったのです。
それらの苦情を処理するために、
各メーカーは町の中にたくさんの
サービス・ステーションを設置していたのです。

それが家電製品がほぼ全家庭に普及した頃には
いつの間にか一せいに姿を消してしまいました。
どうしてかと言うと、日本の家電製品は使用中に
そう簡単に壊われなくなり、
サービス・ステーションの必要がなくなってしまったからです。
日本の家電製品は先ず日本国内で売り出され、
日本人が実験台になってくりかえし改良されてから
輸出に向けられております。

最初の頃は外国でもクレームがつきました。
でもクレームをつけられたからと言って、
日本のメーカーが遠い外国まで
修理に出かけるわけにも行きません。
唯一の方法はサービスにとんで行く代わりに、
アフター・サービスをしないですむような
壊われない製品をつくることです。
メイド・イン・ジャパンが
世界中で評判をとるようになったのは、
壊われない製品をつくるために
サービス精神を発揮して完璧を期することでした。
つまり壊われない製品は家電製品だけでなく、
カメラや時計や自動車などのあらゆる分野で
遺憾なく発揮されるようになったのです。

この精神を工業製品だけでなく、
流通やサービス業の分野で存分に発揮すれば、
日本人は世界に出て行っても
メシにありつけない心配はないのです。


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2002年12月3日(火)

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