第1097回
年寄り相手の商売はこんなに難しい

私は60才の時もはじめて60才を経験する老人の新人でしたが、
いま80才を前にしてやはりはじめて80才を迎える
オールド・オールドの新人として、なるべく年寄り臭くなく、
上手に年をとることを夢見ています。

年寄りらしく見えないためには、
年寄りがおちいりがちな醜いところをよく研究して
そうならないように気をつけることが大切です。
たとえば、年をとると物価の変化に鈍感になりがちです。
鈍感なだけでなく、変化に対して拒否反応を示します。
丹羽文雄さんの昔、書いた小説に
百円札が物を買うときの最低単位になってからも、
昔のことしか頭にない婆さんが
50銭玉を後生大事に渡す場面がありましたが、
一度、頭の中に焼きつけられた物の値段は
なかなか払い落せなくなるんですね。

だから市場に行く機会が少なくなると、
物の値段の移り変わりに気がつかなくなります。
或る時、ふとその事に気がつくと、
今度は驚きが先行して
物を買うことに抵抗を感ずるようになります。
いまは男の人でもスーパーで買い物をするようになりましたし、
また外国から安い食品が輸入されたり、
デフレで安売り競争をやっているので、
物価が上がる一方ということはなくなりましたが、
それでも一度、焼きついた価格に対する先入観は
なかなか洗い落せません。

若い時は身分不相応に高い物を買いたがりますが、
年をとって来ると、
身分不相応に高い物を買いたがらなくなります。
たとえば、パリのエルメスに入って、
スーツやコートを着てみますが、
値札を見ると「こんな高い物なんか」と
すぐ元の棚に戻してしまいます。買えないわけではありません。
でも私には4軒の家があり、
それぞれの家の洋服ダンスの中にぎっしり詰まった
洋服のことを考えるとついひるんでしまいます。
こういうのをケチというのでしょうか。
それとも年をとったというのでしょうか。
「値札をみただけでやめてしまうんだもの」と
私の付き人たちは笑います。


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2003年3月12日(水)

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