第1303回
すし屋の勘定が高くなるわけ

御園というすし屋のオヤジさんは
50年間すし屋をやっていて
築地の魚屋が用意してくれた材料を、
値段がいくらときいたこともなければ、
多い少いと文句を言って断わったこともないそうです。
築地の往復は70才の誕生祝に
オカミさんが買ってくれた自転車に乗って行くので
石油ショックとも関係がなかったし、
親子3人の家族労働ですから
賃上げの影響も受けませんでした。
払う物と言えば家賃くらいなものですが、
これとて下町の裏長屋みたいなところでしたから、
間接費は最低に抑えられていました。

「おやじさん、職人は使わないのですか」ときいたら、
「うん。若いもんが1人いたけど、
こんな儲からん商売じゃ先が思いやられると言って
電気屋に行ってしまったよ」と平気な顔をしています。
うちの息子がすっかり惚れ込んで、
お昼にわざわざ会社の者と2人で出かけて行って、
ちらしずしを注文したら、
例の調子で中トロを山盛りにして、
その上、デザートにメロンまで出してくれて
「いくら」ときいたら、
1人前1500円と言われたそうです。
「いくら何でも、小父さん、それは安すぎますよ」
とアベコベの抗議をしたら、
「心配するな。お父さんからもらうから」
と気前のよいこと。
息子もびっくりしていましたが、
「なるほどこれがすし屋の勘定か」
と私も妙に納得したことを覚えています。

テレビの銭形平次がめしより好きで、
週に一ペン銭形平次の番組のかかる時間になると、
さっさとノレンをおろして、
勝手知ったお客さんだけの商売をやっていました。
そのオヤジさんも寄る年波には勝てなくなり、
とうとう自主廃業してしまいました。
以来、東京中、走りまわって、
これはと思うすし屋さんを覗いてまわりますが
二度と再びあの江戸っ児を字に書いたような
すし屋の職人にあったことはありません。
それでもすしは好きですから、
すし屋さんにはよく行きます。
一握りの目から火が飛び出すような
高くて気取ったすし屋だけ残って、
あとは100円ずしとか回転ずしだけになってしまいました。
これも時代の流れということでしょうか。


←前回記事へ

2003年10月4日(土)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ