第1362回
香港の家具は全部香港において行きます

私は香港から上海に引越しをするに際して
世界一高価な家具ごと
自分のマンションを貸すのはもったいないから、
家具は上海に持って行って、
別に安い家具を買って
居抜きで人に貸すことを考えました。
しかし、住むところを変えることは、
場所が変わるだけでなく
生き方も変えることじゃないかと考えなおして、
過去の10年を背負った形で
家具まで背負って引越しをするのを
やめることにしました。
時代が変わったのに
過去に恋々とした生き方では
如何にも思いっきりが悪いと反省したのです。

すると不思議なことに
スーッと気分が晴れて
肩の荷が下りてしまいました。
たかが家具の話にすぎませんが、
物にとらわれたり、お金にとらわれたりすることが
如何に人間を醜いものにするか悟らされました。
10年前の自分がいまの自分と同じであってはならないのです。
10年前の香港もいまの香港とは違うのですから、
次に住む上海が香港の続きであっていいわけがありません。
ましてや「新天地」という
中国の最先端を行く上海の一郭に居を構えるのですから、
心まで一新するのが本当です。

いま中国で流行のインテリア・デザインは
多分、中国の伝統的な家具や装飾をアレンジして、
そこにヨーロッパ風のモダンな家具を取り入れたものです。
古い家具は最近、私が一生懸命、蒐集していますので、
その中から何点か選び出します。
モダンな家具は広東省の深市と東莞のあたりで
香港の家具屋がイタリアやデンマークのデザインを取り入れて
製造して海外に輸出しています。
国内での最大のマーケットは当然ながら上海です。
上海におれば、中国のそうした商品が
必らず陳列されているのですから、
その中からセンスのいい物を選べばいいということになります。

そう考えたら、世界一高い家具など
少しも惜しいと思わなくなってしまいました。
時代によって、また所によって、
気分を一新して出発するのが
次の時代を生きる新しい生き方です。
でもお金がいくらあっても
そういう思い切りよい生活のできない人が
多いのじゃないでしょうか。