第1460回
本屋は経済発展のレベルを測る物差しです

経済の成長がはじまると、
本屋が繁盛するという経験を
私は台湾でやったことがあります。
いまから30年前、
私が台湾の国民政府に迎えられて、
亡命先の東京から24年ぶりに台湾へ帰った時、
台湾の本屋には
国民党の本と学校の教科書しか売っていませんでした。
日本の雑誌や書籍には検閲があり、
文藝春秋や中央公論でも
発行されてから4ヵ月たたないと
読むことができませんでした。
新聞や週刊誌は入国の時に
税関で没収されるのが当り前でした。

ところが、台湾で高度成長がはじまると、
経済や経営や国際知識の情報が必要になってきました。
中国語で書かれたそういう本がなかったので、
日本の取次が私のところへ応援を頼みにきました。
当時はまだ日本語の読める人が多かったし、
日本語の本で何とか間に合ったので、
日本語の本の輸入ができるように
口をきいてほしいと言ってきたのです。

私は二つ返事で承知をし、
監督官庁である新聞局に
検閲をやめてもらえないかと手紙を出したら、
「これは我が国の国策である」
と剣もほろろの返事が帰ってきました。
私は怒って行政院長(総理)のところへ行き、
「経済と文化は車の両輪なのに」
という理論をとうとうと述べ立てると、
時の総理は
「完全な撤廃は難しいけれど、
 検閲に要する時間を3日か4日というのではいかがですか」
と妥協案を出してくれました。
3日や4日ならやってもやらなくとも
似たようなものなので、
私はお礼を述べました。
台湾に日本語の本が入るようになったのはこの時からで、
私は台湾に日本語の本屋を10軒ほどつくりました。
いまでも台湾に輸入される日本語の本の約半分は
うちの書局が扱っています。

しかし、ちょうどその時から
台湾の経済成長がはじまったので、
次々と中国語で書かれた本や翻訳本が
出版されるようになったので、
うちの本屋でも6対4の割合で
中国語の本がたくさん並んでいます。
本は文化だけでなく、
経済の発展の程度を示す尺度なのです。


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