第1540回
華僑の歴史を知りたかったら州島へ

もう信仰心もうすらいだ昨日今日ですが、
假りに神様や仏様が
歴史の遺産にすぎなくなってしまったとしても、
現代人に納得できるシンボルとしての条件は
備えている必要があります。
時代が変われば、
千里眼も順風耳も年をとって
定年退職に追い込まれることは考えられることです。
それでは気の毒だし、
退職金も払えないことだし、
せめて門番として使ってやろうと、
媽祖宮の管理委員会の面々は
考えたのかも知れません。

もしそうだとしたら、
媽祖さまには別の新しい情報源が必要になります。
それはともかくとして
千里眼と順風耳を
媽祖のそばに復職させるのが先ず第一で、
そのために必要な費用は私が払ってもいいと、
この10年間ずっと思ってきました。
もし私の申し出を管理委員会が拒絶したら、
気象台が使っている最新鋭機械と
パソコンくらいは寄付しようか、
その方が現代人にはわかりやすいし、
管理委員会の石頭にも効目があるだろうとも
ひそかに思っていました。

でも総勢32名で媽祖の総本山に到着して見ると、
そんな心配は一さい吹っとんでしまいました。
仁王さんの入る左右の建物の中に按置されていた
千里眼と順風耳は媽祖の身辺に戻されていて、
門番の棟は空になっていたのです。
きっと私と同じ考え方をする人がいて、
その意見が容れられたに違いありません。
おかげで私がよけいな口出しをする必要もなくなったし、
よけいな出費もしないですみ、
胸のとどこおりが一挙におりる思いをしました。

ちょうど媽祖の誕生日を間近かに控えていたので、
参詣者も多かったし、
東南アジアの各地にある媽祖宮の分家から
本家に挨拶に来る分身の媽祖の行列が
次々と爆竹を鳴らし、
旗を風に靡かせながら入ってくるので、
私と一緒に行った人たちには珍しくもあり、
面白くもあってとても喜んでいました。

「これが発展する中国のもう一つの側面ですよ。
変なところへ連れて来られたと思ったかも知れませんが、
中国の経済がどんな形で
展開されるかを見る参考にはなりますよ」と
勝手なこじつけをしながら、
私も満更ではありませんでした。


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