第1554回
現代に通用しなくなった金言・名文句

中国は文字の国ですから、
金言とか名文句がたくさん残っています。
そういう金言名文句を集めた辞典も
たくさん出版されております。
その中から自分の気に入った名文句を探がすために、
私は10冊以上も買いましたが、
現代に通用するような、
私たちが「これだ」
と思わず膝を叩きたくなるような名文句は
意外にもなかなか見当りません。
そういうところに時代の変化を感じてしまいます。

どうしてかというと、
中国を長く支配してきた官僚制度は
字の読める人、即ち読書人によって形成されており、
大半の文化人が役人か、役人の経験者です。
そうした役人の世界は
伝統的なしがらみでかんじがらめにされており、
少々気のきいた人は
誰でもトラブルにまきこまれる度に
嫌気がさしてしまいます。
だから
「もうこれ以上、上司にぺこぺこするのはご免だ。
 帰りなん、いざ。
 故郷の田畑まさに荒れんとす」
といった類いのムードが強く、
そうした気持を表わした文句がやたらに多いのです。

さすがの私もうんざりして、
もう少し気のきいた文句はないものかと、
諸橋漢和大事典十何巻をはじめから終わりまで
ひっくりかえして見るようなことまでしました。
それでも文化を生んだ土壌に
変化があったわけではありませんから、
大きな発見はありませんでした。
結論から言えば、
短い文章で誰が読んでもわかる文句を探がしてきて、
いまの床の間のない日本の住宅でも
壁にかけて楽しめる扱い方に
全面的に切りかえるよりほかないことに気づきました。

日本では書家は特別な扱いを受けており、
芸術院会員に数えられるような有名書家の書は
高価でもありますし、容易に手に入りません。
ましてこちらが望むような文句を
書いていただけませんかと頼むことはもっと困難です。
となると、書はますます現代人の生活から
遠ざかってしまいます。
では「日本が駄目なら中国があるさ」
ということになるかというと、
これまた似たような傾向を辿っています。
書を日常生活の中に戻さなくては、
というのが近年来の私の願いの一つなのです。


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