第1589回
節約十両、理財百両、刻苦千両、無慾萬両

私が古来から伝わる金言名句の中から
私の好きな文句を選んで、
中国の書家に頼んで揮毫してもうらう企画をしたら、
予想外の反響で、多くの申し込みがありました。
皆さんの記憶にとどまっている名句は
いくらでもあるのですが、
時代が変わると、現代人の心を打つ名句は
意外にそう多くは残っていません。
それでも少しずつ拾い出して、
毎週、発表しますので、
書の文化に興味をお持ちの方は
気をつけてごらんになって下さい。

ご連絡をいただいた方々の中には、
古今の名言よりも邱先生の名言はないのでしょうか
というご注文が何通かありました。
私は自分の本を人に贈呈する時に
いつも二言、三言、書き添えるので、
中央公論社の亡くなった嶋中鵬二社長から、
「邱さんの箴言集を本にしても面白いですね」
と言われたことが何回もありました。
ほかの出版社の社長さんからも
「邱永漢コピー傑作集・糸井重里編というのを出しましょう」
と誘われたこともあります。
でもこれだけはいまだに実現していません。

今回、読者の方からそう言われて、
改めて自分の創作した文句を
いくつか思い出しました。
その一つは
「貯蓄十両、儲け百両、見切り千両、無慾万両」
という文句です。
かつて私の本にサインをして
田中角栄さんに贈ったところ、
「そうだ、そうだ、全くこの通りだ」
と田中さんに頷かれたことがありました。
でもこの通り書いたのでは
中国人に何のことかわかりません。
中国語になおすと、「貯蓄十両」はいいのですが、
「賺銭百両」では日本人に意味が通じません。
「見切り千両」を強いて中国語になおせば
「看破千両」となりますが、
これも日本人には何だかわからないでしょうね。

さんざん工夫した結果、
「節約十両、理財百両、刻苦千両、無慾萬両」となおしました。
少し意味が違いますが、
これなら日本人にも中国人にも理解ができます。
貯蓄をすればちょっとしたお金が貯まりますが、
お金をふやせる人にはかないません。
またどんなお金儲けの上手な人でも
苦しみに耐えなければもっとお金持ちにはなれません。
しかし、どんなに大金持ちになった人でも、
慾のない人の前に出たら顔色なし、
というほどの意味です。


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