第1838回
専門家と経営者だけが外国で生きられる

コスト・ダウンの至上命令で
一番大きな影響を受けるのはアメリカです。
アメリカが不況になれば、
アメリカ人はもっと節約を強いられますから、
もっとお金のかからない生活をしようとします。
すると、もっと安い日用品を買おうとしますから、
対中国貿易赤字は
もっとふえる方向にあります。
絶対絶命で逃げ場がありません。

それに比べると、
日本はずっとましです。
物づくりの環境は日本国内から
東南アジアや消費国に移りますが、
日本人の場合は自分たちが資本と技術について
生産基地に動きますから、
アメリカのように物づくりを廃業して
完全な買手になってしまうことはありません。
海外進出する日本企業の株主であり続ける限り、
日本人は所得の分配にあずかることはできますが、
コスト・ダウンが最大のテーマである以上、
コストの高い日本人を
大量に移民させることはできません。
日本人のコストを安くすることは
企業大移動がもたらす宿題の一つですが、
結果として日本国内の失業率を
かなり引き上げることになります。
とりわけ地方都市の空洞化と失業の増加は
老齢化に続く国内の政治問題ですが、
いずれもそう簡単に片のつくことではありません。
中年から上の人は仕方ないとして、
これから社会に出る人にとっては、
こうした社会の大変化を前にして
自分たちは如何に対処すべきか、が
最大のテーマになるのではないかと思います。

外国に行くという道はもちろん、
閉ざされておりません。
しかし、外国に行って
自分たちの30分の1の賃金水準の人たちと
競争のできる立場ではありません。
日本人としてできることと言えば、
それぞれの分野のエキスパートになることと、
経営者として人の上に立つ人になることです。
いま私は毎日のように
そうした悩みを持っている若い人たちの
履歴書を受け取っていますが、
残念ながらサラリーマンの延長線上で
物を考えている人たちが大半です。
いま外国へ行って物になるのは
専門家と経営者だけなんです。
そういう訓練を
これからやらなければならない時がきたのです。


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