中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2278回
邱飯店のオニオン・スープは抜群です

私はオニオン・スープには目がなく、
ヨーロッパ中、食べ歩きましたが、
最終的には我が家にかなうものはないという確信を持ちました。

うちのオニオン・スープの原形は私の頭の中に描かれた物です。
もともとは高校生時代に台北市に住んでいて、
土曜か日曜の休みの時に黒いマントをひっかけたまま
大稲埕という台湾人の住居の多い地域にある
円公園という屋台の並んだ盛り場に押しかけました。
そこの名物の一つが
排骨湯という豚の骨つき肉に衣をつけて揚げた物を
スープにしたものがありました。

その味がいつまでも頭にこびりついていて、
香港に亡命して異郷で土地の女性と結婚した折り、
「こんなものつくってみてくれないか」
と家内にわけを話して、
ああでもない、こうでもないと
何回もやりなおしをさせてつくったのが
我が家のオニオン・スープです。

私はそれを昔食べた懐しの味として珍重していたのですが、
台湾の政府と折り合いがついて台北に戻るようになってから、
或る時、新装なった円公園に案内されて
メニューにあった排骨湯を食べて見たら
似てもつかないまずい味だったので、
驚いて口をつけるのをやめました。
我が家で空想妄想してつくりあげた排骨湯の方が
抜群においしいことにやっと気がついたのです。

以来、我が家の出色のスープの一つとして時々、食卓に出して
その度にいつもお褒めの言葉をいただいています。
それを陶朱公館で再現してもらったのですが、
何回やっても味の起伏が激しく、
あやうく私から見離されるところでした。
それが最近やっと安定しましたが、
注文を受けてからテーブルに出てくるまでに
少々時間がかかりますので、
前菜の次にすぐ出てくるスープと違って、
メニューの最後に近づいた頃にやっと姿を現わします。
でも10人前で78元、その半分の人数で38元(570円)ですから、
財布の痛む心配はありません。


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