中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2361回
お金のないフリをするのが一番です

中国のお金持ちは脱税とか密輸とかの容疑で
逮捕される心配があるだけではありません。
それ以上に心配なのは、誘拐されたり、殺害されたりすることです。

たとえば、よく新聞ダネになるのは深圳や東莞あたりに進出している
台湾企業の経営者たちが工場で暴漢に襲われて殺害される事件です。
広東省の工業団地には早くから台湾や香港の工場が進出しています。
町工場に少々毛の生えたていどの小さな企業でも
いくらかお金を持っていることを知られると、
従業員の中の不良たちから狙われます。
いつ現金が持ち込まれるか、
またどこにお金をかくしてあるかは
ふだん使っている使用人たちの目につきます。
首になってそれを恨みに思う部下が町の不良と結託して本人を襲い、
その犠牲になることは決して珍しいことではありません。
大抵は頑強に抵抗して絞殺されますが、
気前よくお金を払っても証拠いん滅のために撲殺されてしまいます。
中国ではお金持ちになりたい人も後を絶ちませんが、お金持ちになると、
いつどこで殺されるかわからないという危険に曝されるようになります。
ですから、本当にお金持ちになったら、金のないフリをするに限ります。

ところが、いまの中国では、はじめて成金になる人が多いので、
その訓練がまだできていないのです。
思いもかけずなって見たもののお金を持っていることはとても危いし、
不安のタネになります。
もっともこれは何も中国だけのことではありません。
ライブドアだって、村上ファンドだって、
野球団のオーナーになろうとか、
人目につくような派手なことをしなければ、
恐らくはお目こぼしになったに違いありません。
でもお金の顔を見たこともない奴が突然、巨億の富にぶつかると
それだけで頭がクラクラして制御がきかなくなるのです。
その点では中国も同じで、
中国の方がもっと不安で生命の不安にも曝されます。
ですから皆さん、中国に行っても大金持ちになろうなどと考えないことです。
もっともそんな心配をしないですむ人の方が大部分でしょうが。


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2006年8月27日(日)

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