中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2556回
先ずイミテーションのレベルを見て下さい

いまの中国は、産業界のあらゆる分野で
オリジナルのデザインを必要としています。
中国人は物真似の天才だ、
人の知的財産を平気で盗むと非難されていますが、
確かに現段階ではおっしゃる通りです。
自分で工夫してつくれと言われたら、なかなかできませんが、
見本を見せて、「この通りにつくれ」と言ったら、
物の見事に同じ物をつくって見せてくれます。
ホンダのコピーでも、ソニーのコピーでも、
本物が驚くほどの出来栄えです。

いま上海や北京や広州に行って、
「お土産は何になさいますか」ときかれたら
本当は「ブランド商品のニセモノ」と言いたいほど
見事なニセモノが売られています。
洋服やカバンなら
エルメス、プラダ、ルイヴィトン、ベルサーチ、
時計なら、パテック・フィリップスからブルガリまで
何でもそっくりさんが手に入ります。
身分不相応なものを身につけても、
却って人に疑われるだけのことですが、
イミテーションがどれだけ精巧にできるかを見れば、
その土地の人たちの器用さと仕上げのレベルがわかります。

50年前の日本がかつてそうでした。
そういう職人芸と完璧を期する職人気質があったればこそ、
今日の経済大国日本があるのです。
台北にある故宮博物院の数々の逸品を見れば
中国にその伝統のあることは誰も否定できません。
それがマンネリにおちいって長い歳月がすぎましたが、
新しい時代に欠けているのは
オリジナルの才能を開発することです。
そのためにはデザインのABCからはじめるよりほかない
と私は痛感しています。

そのためにとうとう日本の若いデザイナの仲間に呼びかけ、
志願者を集めて上海に仕事場をつくることになりました。
その仲間たちがオフィスを探がしているうちに
こんな話がとびこんできましたので、
「どうですか」ときいたら、
「うーん、環境はとてもいいけど、少し遠いのと、
僕達だけじゃなあ」
と二の足を踏んでいます。
みんなで渡れば怖くないと言っているように
私にはきこえました。


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2007年3月10日(土)

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