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         第2555回 
          中国の消費市場はデザイナの檜舞台 
        いま消費中心の経済開発に火がついたところですが、 
          中国で不足しているのはオリジナル商品のデザインです。 
          デザインはインテリア、グラフィック、 
          そしてファッションと広範囲にわたりますが、 
          どの分野もまだ駆け出しの段階にあります。 
        その中国で一番売れている携帯電話は 
          韓国のサムスン製ですが、 
          それはサムスンの携帯電話のデザインがよく、 
          中国人の好みにあっているからです。 
          私はサムスンの創業者である李秉浮ウんとは 
          ご本人がなくなるまで15年のつきあいがあり、 
          いま世界一を誇る電子工場を建てる時も相談を受け、 
          現場にも案内されたことがあります。 
          まさか日本を追い抜いて 
          世界でトップを争うスケールになるとは 
          思ってもいませんでしたが、 
          サムスンは工業製品に 
          デザインで付加価値をつけるアイデアを持った企業です。 
        それに対して台湾のノート・パソコンは 
          世界一の生産量を誇っていますが、 
          実用一点張りで、デザインには全く無関心です。 
          中国にはいまや台湾のIT産業の90%が進出していますが、 
          中国大陸が台湾の二の舞を踏まないように、 
          デザインに力を入れる必要があります。 
          そのために、私は 
          デザイン学校をつくるべく準備をすすめていますが、 
          デザイン学校の生徒からもらった学費では、 
          日本から教えに来てもらった先生たちの 
          飛行機賃も払えません。 
        窮余の一策として、私がデザインの仕事を探して、 
          それで本人たちの収入を支え、 
          その代わりに授業料はタダ、 
          というシステムを思い立ったのです。 
          もちろん、皆、若い人たちばかりですから、 
          すぐ承知してくれました。 
          私が中国の広告会社を片っぱしから調べ、 
          その中から見込みのありそうな会社を選んで 
          その大株主になったのは、 
          本当はデザイナたちに仕事の場をつくってあげよう 
          と考えたからです。 
          たまたま副産物として株価が上がり、 
          「絵に描いた餅」がふくれあがりましたが、 
          本当の目的はデザイナたちに 
          仕事の場をつくってあげるためだったのです。 
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