中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2577回
先富とそのあとに続く者で押すな押すな

私が35年前に、台湾の国民政府に乞われて
亡命先の日本から24年ぶりに台北市に戻った時、
台湾じゅうの塀や役所の壁には
「三民主義」とか「反攻大陸」という
スローガンが書きまくられていました。
私が台南県の新市につくった工業団地のどこの壁にも、
政府に協力したスローガンが出されていないのを見て、
私の不協力をなじった人もありました。

私が帰国した時の台湾のGDPは米ドルの700ドルでした。
石油ショックを経て、台湾の高度成長がはじまると、
GDPはすぐ1000ドルをこえました。
1000ドルが1500ドルに達すると、
人々の精神状態に大きな変化が起り、
「三民主義」とか「反攻大陸」を口にする人は
目立って少くなりました。
国民の平均所得が1500ドルをこえると、
人々は主義とか思想の話をしなくなることを目の当りにしました。
更に経済成長が進んで、GDPが3000ドルに達すると突然、
消費ブームが澎湃として起ります。
1000ドルの時は自分の3度のメシと国元への仕送りで手一杯ですが、
3000ドルに達すると、自分でお化粧をしたり、
きれいな服を着る余裕が出てくるのです。

いまや中国大陸で将に同じようなことが起ろうとしています。
上海や広州や北京では
既に平均所得が3000ドルをオーバーしているので、
右を向いても左を向いても、お金儲けの話ばかりです。
抜け目がなくて、人の先頭を走っている人たちは
うまく要路の人たちと結託して不動産投資で産をなしているし、
でなければ消費者の欲しがる商品を生産したり、大量販売して、
成金になっています。
ケ小平が予想し、
その存在を容認した先富(先に金持ちになる人)が続出して、
共産党がかつて試みた富の平等な分配は
完全に崩れ去ってしまいました。
それによって格差社会が実現したと見る人もあるようですが、
後に続く人たちも同じように金持ちになろうと思って
その後を追っているのです。
日本人が考えているような格差社会とはちょっと違います。


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2007年3月31日(土)

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