中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2593回
中国でも町工場にも存亡の危機が

貿易の大幅黒字と消費経済の拡大とが
同時に大へんな勢いですすんでいるので、
中国経済にかなりの混乱が起っています。
どちらも人民の平均所得を押し上げますので、
決して悪い話ではありませんが、
それぞれの人のおかれた立場によっては、
商売がやりにくくなったり、
頭の痛くなる話題には事欠かなくなりました。

もう1年も2年も前から、
深圳や東莞やあるいは、
温州とか上海周辺の工業都市では
人集めが難しくなっています。
人集めが難しくなると、賃金を引き上げて
よその会社から引っこ抜きをする工場も現われますから、
労働市場は大混乱におちいります。
もともと定着率に問題のある中国で引っこ抜きがはじまると、
月に百元の賃金差でも労働力の大移動が起りますから、
大企業なら人事担当部門が、
中小企業ならオヤジさんが先頭に立って
人集めに駆けまわらなければならなくなります。

そうした動きがことしの旧年の正月で
クライマックスに達してきました。
例年、旧正月になると1週間は休みになりますから
地方から出稼ぎに来ている連中は一せいに故郷に帰ります。
ちょうど1年に一ぺんのボーナスをもらった直後でもあり、
「すぐ戻ってきます」と口では言っても、
そのまま戻って来ない人が年々ふえているので、
雇主の方でボーナスを全額渡さず、
半分だけ渡して残りは職場に戻って来てから
と条件をつける会社も耳にするようになりました。

それが今年は
1週間すぎても1人も帰って来ず、
2週間すぎても人の影が見えず、
とうとう1人も戻って来なかったという
中小企業の工場も珍しくないようになったのです。
待っているのは工場長を兼任する
オヤジさん1人だけというのですから、
店じまいをするよりほかありません。
賃金を払わないから従業員が戻って来ないのではなくて、
払う賃金の少い工場が
店じまいをする時代に入って来たのです。
町工場がいまや存亡の危機に直面してしまったのです。


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2007年4月16日(月)

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