中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2646回
過剰流動性をやさしく説明すると

日本の国で過剰流動性による資産インフレが起ったのは
20年以上も前のことなので、
いま不動産を買ったり株を買ったりする若い人の中には
何のことだかわからない人も結構たくさんいるようです。
わかっている人から見たら、
「何だ、そんなことも知らないのか」と言いたくなるでしょうが、
手っ取り早く説明すると次のようなことになります。

昔々、通貨が紙っ切れでなくて、
金銀銅の通貨でできていた頃は、
売買をすると硬貨で決済をしていました。
国境をこえて物の売り買いをする場合も、
金貨もしくは金地金で決済をしましたので、
輸出入がアンバランスになると
最終的には金貨もしくは金塊を
相手国に引き渡さなければなりませんでした。
ところが、どこの国も自国が保有する黄金が
外国に持ち出されることを極端に嫌ったので、
輸入が急増すると、すぐに輸入税を引き上げたり、
輸入を禁止して貿易上のアンバランスを調整したのです。

戦後はどこの国も国家が金及び金貨を保有して、
それを担保にして紙幣を発行するようになりました。
そのうちにアメリカが先ず金本位制を離脱して、
紙幣だけを通貨として通用させる制度に変わってしまいました。
国によってそれぞれやり方は違いますが、
国と国との間で貿易が盛んになっても、
輸出入のバランスがとれることを前提として
自己の貨幣の中立を維持しようとしたのです。
万一、新しいお札を増刷する時は、
国の保証か、外貨を準備金として、その価値を裏づけてきたのです。
逆に言えば、外貨の裏づけさえあれば、
いくらでもお札の印刷ができたので、
日本銀行は輸出によってふえ続ける米ドルを
民間から持ち込まれたら、
それを裏づけとして
いくらでも円を印刷して供給することができたし、
またそうしなければならなかったのです。
つまり輸出の黒字が一方的にふえ続けるようになると、
日銀の窓口から円が大洪水になって
国内に溢れ出してしまったのです。
過剰流動性とは円が必要以上に溢れ出して
物価を刺戟するようになった状態になったということです。


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2007年6月8日(金)

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