中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2822回
オイル・マネーの動きが目立たないわけ

石油を売って稼いだお金が
産油国の王様たちのふところにころがり込むようになっても、
最初の頃は使うことに生命賭けで、
それをどう運用したらいいか、あまり関心がなかったようです。
何しろ銀行に預けて利息をもらうことは
コーランの教えに反することだし、
まさか上に立つ者が先頭に立って禁を犯すこともできません。

そこでマレーシアにある銀行に頼み込んで
利子を用いない金融の仕組みを考案してもらい、
いわゆるイスラム金融を発足させましたが、
仕組みがややこしいのと、
たとえば住宅ローンを組んでも利子をもらわないとなると、
お金を返えし終わるまで、
家屋の所有権を一旦、銀行に移さなければなりません。
すると、不動産の登記費用が倍になってしまいます。
イスラム国家なら、国の法律まで改正して対応してくれますが、
普通の資本主義国家では
よけいな費用がかさんでしまうことになります。

というわけで、金融資本としての機敏な動きがとれず、
プロジェクトへの出資を優先させるのがやっとです。
それがマレーシアやシンガポールからはじまって、
イギリスやアメリカの金融機関と提携するようになったのは
ついこの6、7年のことです。
その場合でもイスラム資金ということになると、
投資先が制限されますから、
株とか不動産とか範囲が限られてしまいます。
したがってオイル・マネーがいくら巨大なものになっても、
その威力を発揮する分野は全世界に及ぶものではありません。
その代わりその縄張りの範囲内であれば、
オイル・マネーの威力に及ぶものはなくなります。

最近で言えば、ニューヨークの証券取引所をはじめ、
ロンドンや東京の取引所も
オイル・マネーに狙われているときいています。
お金だけあってマネージメントはできませんから、
M&Aではありません。
しかし、気がついたら、
資本主義社会の要所要所を押える
布石になっている可能性はあります。


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2007年12月1日(土)

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