中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2866回
戦後の累進税制は「嫉妬の税制」でした

税金を払う立場にいない人にとって税金の本は不要のものです。
ところが、収入がふえて税金が重荷になりはじめると、
藁をも掴みたい気持に変わります。

私が「ゼイキン報告」を日本経済新聞に連載したのは、
戦後最大の不況で山陽特殊鋼が倒産したり、
山一證券に日銀特融をやった昭和39年が終って、
私が橋幸夫の「恋のインターチェンジ」なんて歌謡曲をつくって
一年間遊んだあとの昭和41年になってからのことです。
不況のあと金儲けが一段と難しくなって、
商売をやっている人たちは
誰しも税金の重さにあえぐようになっていました。
そのことに気がついて、
私は税金の俄か勉強をはじめたのですが、
そこへ日経から連載の口がかかったので、
二つ返事で「税金の話はどうですか」と申し上げたのです。
そうしたら
「あんな砂を噛むような面白くないテーマでは、
いくら筆の立つ邱センセイでも
途中で読者に愛想を尽かされるんじゃないですか」
と難色を示されました。
それを押し切って
「とにかく今一番多くの人が悩んでいることですから」
と主張を曲げなかったのです。
場合によっては3ヵ月で打ち切りますよと脅かされましたが、
実際に連載をはじめて2週間もたつと読者の評判になったと見えて
編集局の会議の結果、
好きなだけ連載されて結構ですという通知が届きました。
それまでに書かれた税金の本は
すべて大蔵省の役人か税理士の書いた物ばかりで、
私のように税金を払う側の人が書いた本は1冊もなかったのです。

私が先ずとりあげたのは、
最高93%に及ぶ累進税法は
富の分配を公平にするという大義名分だけれど、
私が見ると「嫉妬の税制だ」ということでした。
隣りの家の屋根瓦が黄金でできていても
自分の家の屋根が雨漏りするわけでもないのに、
隣りの屋根が黄金でできているというだけのことで、
あの黄金の瓦を取り払ってしまえという精神でつくられた税制だと
指摘したのです。
それが30年もたつうちにどうして50%まで下げられたかというと、
貧乏だった役人たちの年収がふえて
自分たちがこの税率にひっかかるようになったからです。


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2008年1月14日(月)

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