中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2869回
相続に役立った借金もいまは昔

もう一つ、私が「ゼイキン報告」の中で指摘したことは
相続税のハードルを如何にして乗りこえるかということでした。

40年前の相続税の税率は最高が70パーセントでした。
70パーセントも税金をかけられたら、
どんな金持ちだって
オヤジの事業をそのまま受け継ぐことができません。
相続が3回続いたら、
全財産が全てなくなってしまうと言われた時代です。
ところが、西武も東急も
初代のあとを二代目がちゃんと継いでいました。
家までオヤジの住んでいた家にそのまま住んでいます。
その秘密はどこにあるんだというのが私のテーマでした。

「所得を発生させずして資産をつくる法」
がそのまま資産の相続につながっていたのです。
土地に借金がついていると、
税務署の財産の評価法が実際の取引価格と違ってきます。
市価で10億円している土地でも固定資産税をかける評価では大体、
4億円くらいになります。
その土地についている借金が7億円だとすると、
売れば3億円が手元に残る財産でも、
4億円の評価に対して
7億円の借金がついていることになりますから、
3億円の負債になります。
これを次々と重ねて行けば、
100億円の資産が100億円の借金として計上されます。
そういう引き算をやって
最後に会社の持株に同じくらいのプラス財産があったとしても、
税務署の計算した相続財産は
マイナスになってしまうことが多いのです。

ですから、
中小企業のオヤジさんのように借金能力がないか、
借金の少い人は却って多くの財産を遺したことになり、
うっかりすると
子供が親の会社を継げないようなことが起りますが、
財閥までのしあがった新興成金は借金のおかげで
ほとんど相続税にストップをかけられずに
後を継ぐことができたのです。
借金は財産づくりにも役立ちましたが、
相続にも大きな役割をはたしてくれました。
そうした借金が神通力を失ったのは
バブルの総頂期に信託銀行が
借金の節税効果を誇張して宣伝してからです。
土地の評価に対する穴ふさぎを税務署がやってしまったのです。


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2008年1月17日(木)

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