中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2981回
また再び資産インフレの新しい波が

中国では溜まりすぎた外貨を有効に働かせるために、
新しい試みとして2000億ドルの資金を運用する
中国財富基金中国投資公司という機構を設立しました。
その最初の投資として
先ず30億ドルをブラックストーンの株に投じ、
第2弾としてモルガン・スタンレーの株の9.9%に
50億ドルを出資したところ、
サブプライム・ローンによる金融不安で
早くも前者は3分の1ほど、
後者は5%下落して前途多難なることを思い知らされています。

董事長に任命された楼継偉さんに言わせると、
「北京でタクシーを1台任された運転手が朝、目が醒めると
今日は1日で300元稼がなくちゃ仕事にならないぞ
と自覚するように、
私も1日3億ドル稼ぐことを念頭において働いています」
と冗談をとばしていますが、
その出鼻を壁にぶっつかったとこです。
もちろん、はじまったばかりで
四の五の言う時期ではありませんが、
その大半を海外のファンドとか、金融資産に投ずるとすれば、
アメリカを代表する世界的規模の投資システムと同じく
決して前途を楽観できるものではありません。

なかでも最も問題なのは
こうしたシステムで国内資金のダブつきを解決できないことです。
海外投資が国内遊資を収縮させるためには
民間資金を回収して外貨に換える過程が必要です。
つまり政府資金による投資ではなくて、
民間資金を外貨に換えて海外に投資させるのでなければ
バブルの発生にストップをかけることができないのです。
そのためには民間の海外投資を積極的に奨励するか、
もし民間企業や個人にその能力や意欲がなければ、
国営企業が大幅増資をして先ず民間の投資資金を吸収し、
その資金を海外投資に向けさせるのでなければ、
人民元の大洪水を抑え込む効果はありません。
そういった意味でも、
政府のやっていることは的はずれですから、
オリンピックが終って一段落つくと、
また再び過剰流動性による資産インフレ、
即ち不動産と株の値上がりの新しい波が押し寄せてくる
と私は見ています。


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2008年5月8日(木)

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