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第2982回
資源国と工業国のドルは同じドルでも

いま米ドルをせっせと稼いでいる国は
資源国と工業国に大きく二分されます。
資源国を代表するのはアラブを中心とした産油国であり、
ロシアがそのあとを追って、
更に産油国を追い越さんばかりの勢いになっています。
どちらも稼いだドルは
王様とか、権力者といった少数者に握られているので、
それがふえ続けたことによって
自国内に過剰流動性を惹き起す心配はありません。
その代わりドルが目減りするとその分、大きな損害を蒙る心配があります。

これとは別に工業国で
先頭に立ってドルを稼いだのは日本ですが、
続いて中国が「世界の工場」として
輸出で大量のドルを稼ぐようになり、
いまや日本を凌ぐスケールになっています。
これらの工業国は、国が稼いでいるのではなくて
輸出をした民間企業(国が大株主をつとめる上場企業も含めて)
が主役を占めているので、
稼いだドルを自国通貨に換金して支払いをします。
するとその分、自国通貨がふえ、
それがインフレを惹き起します。
外貨が増えた分だけ国は金持ちになった錯覚を起しがちですが、
もともとは民間企業のお金なので、
その扱い方をあやまると、物価高をもたらしたり、
資産インフレを惹き起したりして
社会秩序に大変動をもたらします。
従って同じ外貨でも
資源国が稼いだお金と工業生産国が稼いだお金とでは
同じ扱い方をするわけには行きません。

資源国の王様たちが稼いだ外貨の運用を
アメリカのファンドやスイスの大鬼子鬼に任せて大損しても
その損害を蒙るのは一握りの人たちだけですが、
工業国は国全体の人たちのふところに響きます。
既に日本は一敗地に塗れてひどい目にあっていますが、
中国はこれからがいよいよ出番です。
ここで失敗をくりかえさせないためには、
資源国の王様たちと同じことをやらないことと、
またお役人にそれを任せないことが何よりも大切です。
しかし、そのへんの区別がつかず、
中国政府も同じことをやるとすれば、
一人、一人がその代価を支払わされないで済むような
対策が必要だということになります。


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2008年5月9日(金)

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