中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3223回
消費の増大と食糧の不足が同時に

私が20年前にはじめて北京に来た時、
北京の人口は1000万人でした。
いま北京の人口は公式発表で1600万人になっています。
実際には流動人口も多いし、
もぐりで働いている人もいますから、
2000万人くらいはいるんじゃないでしょうか。

また20年前に私が来た時、
大抵の人が政府か国営事業で働いていて、
1人当りのサラリーは人民元で300元前後でした。
10年たって1000元になり、
いまは安い月給をもらっている人でも3000元くらいはあるでしょう。
特殊の技術を持っている人とか、
外国企業で働いている人は
自家用車で通勤している人も少くはありません。

それだけのサラリーが払えるようになったということは、
民間企業でも政府でも
それ以上の収入があるようになったということです。
それだけの収入をもたらしたのは
工業化に成功したということにほかなりません。
工業化は都市と都市周辺からはじまりますので
働く人が地方や地方の農村から集まってきます。
地方から出稼ぎに来た人が稼いだお金を親元に送り、
農村はそれで一息ついていますが、
都会と農村の所得格差はひらくばかりで、
それが大きな社会問題になっています。
しかし、所得格差が社会問題化するくらいでなければ、
国が豊かになれるわけもないのです。
この20年間の中国の富の創造は
都市中心だったと言ってよいでしょう。

ところが、工業が更に発展して
沿海地域の工業地帯で人手不足がはじまると、
先ず賃上げと引っこ抜きが盛んになり、
企業の採算をおびやかすようになりました。
そこで工場の大移動がはじまり、
沿海地域から賃金の安い奥地へと生産基地も労働人口も
次々と動いています。
いままで農業しかなかったところに工場ができると、
更に農業人口が減って工業に集中してしまいます。
農業所得をふやす何らかの政策をとらなければ、
いまに食糧を供給する人がいなくなってしまいます。
国内消費の増大と食糧の不足が同時に起る位置に
いまの中国はおかれているのです。


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2009年1月5日(月)

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