中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3249回
月餅の中に月見だんごを入れただけで

中国で新商品研究室をやりたいと考えたのは
別に昆明に限ってスタートしたわけではありません。
もう何年も前から、他国の商品のコピーをするのは
経済成長の初期においてはやむを得ないことだが、
それがいつまでも続くわけがない、
そのうちに必らず行き詰まる時がくると考えていました。

行き詰まるのは
「世界の工場」を目ざす工業製品についてだけではありません。
毎日、食べる食品からはじまって、
自動車や飛行機や
コンピュータやバイオの製品すべてにあてはまることです。
でも日常生活を送っている大ぜいの人にして見れば、
それこそ毎日、口にする食べ物からはじまって、身につけるもの、
更には生活に必要な日用品の改善改良にまで及ぶのが
当り前と言っていいでしょう。

たとえば中国では中秋の季節になると、
いつもお世話になっている人や取引先に月餅を送る習慣があります。
たったそれだけのために
1年かけて月餅づくりだけをやるという製菓工場さえあります。
しかし、できてきた製品を見ると、
十年一日のごとく同じことをくりかえしているだけで
創意工夫の跡が見られません。
わけても月餅の中のあんこはラードでこねてつくるので
たくさん食べるとたちまち胃にもたれ、胸につかえてしまいます。

そこで私は北京の邱公館のパンやケーキの工場で
日本の月見だんごを月餅の皮で包んだ
新しい月餅をつくるように指示しましたが、
日本から来た職人に鼻にもかけてもらえず、実現しませんでした。
次の年、私が大へんな剣幕で実行を迫ったところ、
自分の関係会社に購入を強制したせいもありますが、
2、3日で何と8千個も売れました。
胸につかえないという理由だけですっかり評判をとり、
その次の年は1万2千個、
そして、3年目には4万個の注文に対して生産が間に合わず、
2万個しか供給できなかったのです。
創意工夫が如何に大切か、
私と私の周囲の人たちは身を以って体験したのです。
ですからこの原理を自分の周辺で応用するなという方が
無理なんじゃないでしょうか。


←前回記事へ

2009年1月31日(土)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ