中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3340回
農作物のグローバル化が一足先に

日本の農業はさまざまのピンチに直面して
新しい展開を迫られるところまで来ています。
小作人から自作農に転換した農民の票を欲しがった自民党の
阿諛迎合政策のために間違いに間違いを重ねて、
食糧の自給率が30%台まで追い詰められてしまいました。
それでも工業化に成功して金持ちの国になったので、
食うには困りませんが、
遊休農地がこれだけふえると、
このまま放置しておくことができなくなります。
ましてや世界的に食糧不足が起る時代が来るとなると、
農業政策を大きく変えざるを得なくなります。

しかし、恐らく食糧の自給政策がはじまる前に、
日本農業のグローバル化が
先行することになるのではないでしょうか。
ちょうど繊維産業の分野で、日本で縫製加工するよりも
日本でデザインした物を
中国に持って行って加工して日本へ持ってくると、
日本人の気に入った物が安くできました。
それと同じことが農業でも起るのではないでしょうか。
私はそれをユニクロ現象と呼んでいますが、
工業製品だけでなく、農作物をつくる場合でも、
日本の技術を持って
その生産に有利な条件を備えたところに行って生産すれば、
日本でつくるよりも5分の1とか、
10分の1のコストで製品ができて来る可能性があります。

たとえばトマトは雨量が少くて昼と夜の温度差の激しいところが
栽培に適していると言われていますが、
日本でそれをつくろうとすると、
雨除けのテントを張る必要があるとか、
ところによっては温室の中で温度の調節をする必要もあります。
ところが広い世界には
そうした天然条件を備えたところがいくらでもあります。
そういう所は産業もあまり発達しておらず、
労働力の供給にも困りませんので、
日本の5分の1、更には10分の1のコストで
生産が可能ということが現実に起ります。
これまでは工業生産ばかりが頭にありましたが、
本当は農業の方が有利な展開ができるのではないでしょうか。
農産物の自給より農業のグローバル化が
一足先にはじまるのではないでしょうか。


←前回記事へ

2009年5月2日(土)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ