中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3366回
工業的豊作貧乏は中国にも定着します

国際的金融不安の次に起るのは
世界的な工業生産業界の豊作貧乏だと私は見ています。
景気がよくなって、人気のある商品がドンドン売れるようになれば、
自動車業界でも家電業界でも
供給が間に合わないほど物が売れるようになりますから、
増産増設に莫大な資金を投じて生産能力をあげようとします。
家電業界はヒット商品と言っても色々ありますし、
商品によって浮沈も激しいので、警戒心も強く、
ブレーキをかけながらの増産体制ですが、
自動車業界は一本調子の市場拡大を続けてきましたので、
ライバル間の浮沈はありましたが、
今回のような業界をあげての豊作貧乏は
前代未聞の現象と言ってよいでしょう。

これまでなら、フォードが業績不振だ、
いや、クライスラーに他社の資本が入ろうとしている
と言ったニュースは珍しくありませんでしたが、
業界をあげて大幅赤字、
アメリカのビッグ・スリーが悉く破産に瀕している、
追いあげる側のトヨタやホンダまで空前の減収減益という
業界をあげての世界的なピンチは
かつてなかったことと言ってよいでしょう。

農業と違って工業は天候とか天変地異による豊作、凶作はなく、
需要と供給のアンバランスに支配されるだけですから、
私は工業製品に出来すぎが起ったら豊作貧乏を防ぐ方法がなく、
どちらかが潰れるまで競争が続くのではないかと
危惧した文章を書いたことがあります。
そういうことが自分の生きている間に起ると
確信していたわけではありませんが、
論理的に突きつめて行けば、
いつかそういうことも起り得ると考えたのです。

それが金融不安がきっかけになって、
アメリカだけでなく、
世界的規模で産業界のピンチが発生したのですから、
先進国の最尖端にある大企業の受けるショックは
私たちが想像するよりもずっと大きいのではないでしょうか。
世界の一流企業の立て直しと業界番付の入れかわりに
かなりの異変と時間がかかるのではないでしょうか。


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2009年5月28日(木)

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