中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3399回
経済的秩序が大きく変わると思いませんか

私の言う工業的豊作貧乏とは
農業と違って生産設備が整うと、
元気が良かろうと悪かろうと、
いくらでも製品ができあがってくることです。
それも同じ市場をあてこんでライバル同志で競争をしますから、
需要があるかないかを無視して供給がすすみ、
バランスが崩れてしまいます。
バランスが崩れれば値崩れを起して損を出します。
それでも競争が続けばどちらが倒産するまで死闘が続きます。
農業なら天候その他天変地異によって
豊作にピリオドが打たれて、
当事者たちは別の心配に追われるようになりますが、
工業生産が主流になると、
いままでに人類が経験したことのない
一大災害に襲われてしまうのです。

今回、アメリカの金融不安に端を発した世界的な不況は
「100年に1度のピンチ」と言いますが、
本当はかつて経験したことのない最大のピンチです。
1929年の時も世界大恐慌に見舞われましたが、
あの時はまだいまのような工業社会になっておらず、
できすぎて処置に困ったのは農作物でした。
ですから子豚を殺したり、小麦の山を焼いたりして
豊作貧乏を克服しようと試みたのです。
それでも需給のアンバランスから逃がれるのは
容易なことではありませんでしたが、
今回は自然の条件に左右されない工業製品の山です。
アンバランスを調整するためには業界の話し合いが必要ですが、
企業や個人の利害関係が絡むだけでなく、
国の政策にも大きく左右されますから、
合意に達する前に莫大な損失が発生し、倒産が先行します。
それでも妥協に達する糸口はどこにもありませんから、
いまの資本主義体制そのものが
大きく揺さぶられる可能性があります。

たとえばGMがこの世から姿を消して、
トヨタとホンダがそれに代わるといった
単純な入れ替えですむものでしょうか。
国家の資本を背景に淘汰される側も粘りに粘るでしょうから、
新しい秩序ができるまでに10年や20年はかかってしまいます。
もしかしたらいまの資本主義が
大きく揺さぶられることになるのではないでしょうか。


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2009年6月30日(火)

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