中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3457回
どこから「陽はまた昇る」のでしょうか

もう40年近くも昔のことですが、はじめてマドリッドに行った時、
泊っていたホテルの窓から見ると、
出勤する若いサラリーマンたちが
地下鉄の入口に吸収されていくのが目につきました。
スペインでは昼と夜を逆さにしたような生活をしている人も多く、
朝まで遊んでいる人がいつ出勤するのだろうかと
首をかしげていましたが、
サラリーマンの出勤光景を見ていると
よその国と少しの変わりもありません。
平々凡々、どこの国にもいる普通のサラリーマンたちなのです。

私はスペインやポルトガルの人たちからはじまって
ヨーロッパの人たちが先進国になり、
アメリカを発見したり、
インビンスブル・アルマーダの艦隊が
四海を威圧した歴史に興味を持っていたので、
そうした征服者たちの子孫はどんな生き方をしているんだろうかと
興味を持っていただけに、
スペインの若いサラリーマンたちが
どこの国のサラリーマンとも少しの変わりもない姿を見て
とてもショックを受けました。
「20才をすぎれば只の人」と諺にもありますが、
コロンブスについて新大陸まで行った人たちも只の人なら、
その何代かあとの人たちも、
「タライまわしの栄枯盛衰」が一巡したら、
只の人になってしまっているのを見てしまったのです。

第二次大戦が終って廃墟の中から復興がはじまり、
敗戦でピンチに追い込まれたドイツやイタリアだけでなく
日本までが活気を取り戻し、
どちらかというと敗戦国の方が
息を吹きかえしているさなかのことです。
私は工業化に成功した日本が経済成長の道をまっしぐらに疾走し、
やがて世界のトップにおどり出ることを確信していたので、
スペインの若者よりも日本人の若者に覇気を感じていました。
それだけにスペインの若者たちを見て
とてもびっくりしたのをいまでもはっきり覚えています。

それがいまはどうでしょう。
あと何日かしたら、選挙の結果が発表されて、
日本の政権が変わるかどうかはっきりしますが、
どちらになってもいまの日本のサラリーマンの覇気のなさは
40年前のスペインにそっくりなのです。
こんなことでどこから「陽はまた昇る」がはじまるのでしょうか。


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2009年8月27日(木)

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