中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3458回
勝負がつくのに時間がかかります

100年に一ぺんの世界大不況の影響を受けて
日本もアメリカやヨーロッパに負けずピンチにおちいっていますが、
日本の金融業界は一足先にひどい目にあっているので、
それほど被害は目立ちません。
もし日本が先陣を受け持っていなかったら、
もともと船団を組んでいるだけで先見性にかけた業界ですから、
集団頭打ちも免れなかったと思います。
日本の金融業者に先見の明があったわけでは決してないのです。

その代わり今回は産業界全体が大きな損害を、
それもかなり長期にわたって国の隅々まで受ける可能性があります。
どうしてかというと、前回は貿易黒字で稼ぎすぎたお金を
「お金でお金を稼ぐ」不動産と株に投じて
足払いにあった痛みが何十年間も続きましたが、
今回はそれがアメリカを中心とした世界的規模で起り、
お金を失った階層が全世界に及んだだけでなく、
産業界全体が過剰生産でピンチに見舞われているからです。

1929年の世界大恐慌の時の過剰生産は農業を中心に発生しました。
ですから穀物を焼いたり、子豚を殺す程度のことですみました。
それでも景気の不振や失業は長期化して
次の第二次大戦まで持ちこしています。
今回は工業化が世界的規模で進み、
工業製品の豊作貧乏が発生していますから、
天候と全く関係なく需要と供給のバランスがとれるまで、
つまりどちらかの会社が潰れて敗退するまで
激甚な競争が続くことになるからです。

簡単な話、GMとトヨタとどちらが生き残れるかという環境の中で、
淘汰されかかったGMが息を吹きかえして
トヨタを追い抜くことができるものでしょうか。
需要の伸びを期待できるのは新興国だけで、
需要の大きい先進国ほど競争は激甚になるのですから、
その結果が景気の恢復につながって行くとしても
短期間で勝負はつきません。
日本はそうした競争のド真ん中におかれているのです。
仮りに最終的に勝てるとしても
大相撲になることは目に見えているのではないでしょうか。


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2009年8月28日(金)

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