中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3461回
「禍福はあざなえる縄」と言うでしょう

いまから30年ほど前、
私が「これからはアジアの時代ですよ」と日本国中、
講演してまわった時、
先ず労働集約的な生産工場が日本から台湾と韓国に移り、
やがてそれが中国から東南アジアにまで及んで、
遂に生産基地の大移動が起ることを念頭においていました。
いま世界中に知られるようになった韓国の三星物産の創業者
李秉普iり へいてつ)さんとは
毎月のように東京やソウルで会い
次の手をどう打つか相談しあったものです。
まさかあれだけ大きくなるとは思ってもいませんでしたが、
日本の大企業までが次々と工場を畳んで海外に移り、
日本が失業大国の仲間入りをするとも思ってもいませんでした。

でも15、6年前に書いた
「先の見えない者は滅びる」「君の会社は大丈夫か」
「立て直しの原則」を読みかえして見ると、
日本の会社が潰れそうになることも、
終身雇用制や年功序列給が成り立たなくなることも
ちゃんと書いてあるのです。
労働集約的なレンズ磨きとか、パーツ産業は
否応なしに海外に引っ越ししなければならなくなると予想し、
台湾に工業団地をつくって
その引越し先の先導役までつとめましたが、
まさかその本体まで日本国内でやって行けなくなる時が来るとは
思い及びませんでした。

事業をやる人は「今日の続きの明日」しか考えませんから、
日本産業の成熟化は想像できても
成熟化が不景気を長期化させて
自分たちがやって来た商売を成り立たせなくなるところまでは
考え及ばないものです。
ですから日本国内で地方都市の郊外に建てた工場が
海外に移転して国内の空洞化がはじまると、
かねてから郊外にアメリカ式の
大型スーパーをつくる用地を探がしていたスーパーの経営者たちが
またとないチャンスと考えてとびつきました。
一度、豊かになって栄耀栄華がはじまると、
それがいつまでも続くという錯覚を起してしまうのです。
まさか、風向きが変わると
ふところ具合が淋しくなった、マイカーを持っているお客さんたちが
ガソリン代までケチるとは考え及ばなかったのです。
いま将にそうした思い違いの代償を支払わされるところです。


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2009年8月31日(月)

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